2022/05/16

「犬の散歩については、こちらが気を付けるのが合理的かなと思います」

金澤 ひかり
朝日新聞記者

「ある日、電車通過直後の踏切でマリナが『ギャン!!』と……以来踏切嫌いに」。兵庫県内に住む女性が飼い犬の散歩中の出来事と、その後についてツイートすると多くの反響を呼びました。飼い犬と踏切を渡る際に注意することについて調べました。






「爆竹が鳴ったのかと思った」

女性が飼い犬のマリナちゃん(シベリアンハスキー、2歳)の異変に気付いたのは、昨年末のことでした。

マリナちゃんの散歩コースには踏切があります。これまでは電車が通過してから時間が経ったタイミングで渡ることが多かったのですが、この日は初めて、電車の通過直後に渡りました。
すると、「ギャン!」と大きな声が2度ほど聞こえました。女性ははじめ、「爆竹が鳴ったのかと思った」と、マリナちゃんの声だとは思わなかったといいます。
しかし、状況からしてその声はマリナちゃんのものに間違いありません。

「もしかしたら摩擦熱とか静電気とか…何かあったのか?」と思い、その場でマリナちゃんの足の裏を確認したり、レールを触ってみたりしましたが、異常は感じられませんでした。

それからというもの、マリナちゃんは踏切を怖がるようになり、女性がハーネスを引いても足を踏ん張って抵抗。踏切を渡るときは、17キロのマリナちゃんを女性が抱っこして渡るようにしています。

ただ、マリナちゃんがこれほどまでに踏切を怖がるようになった理由はなにかあるはず――。

そう思っていた女性は、鉄道に詳しい知人や、ネットで情報を集めましたが、「レールで感電することはない」「爪がひっかかったのでは?」などと、マリナちゃんの状況にぴったり当てはまる答えは出ませんでした。







理由が知りたくて、会社にメール

集まった情報に納得がいかなかった女性は2月、踏切を管轄する阪急電鉄にメールで聞いてみることにしました。

すると、約20日後、阪急電鉄から返信がありました。

いくつかの踏切を調査した結果、マリナちゃんが反応した踏切では「電車を起動させる電気が一時的に強くなることが判明した」とのことでした。
「電気を0にすることは難しい」とする一方で、可能な範囲での対策をとる旨が書かれていました。

踏切でマリナちゃんを抱っこするたびに「なんでこうなったのか知りたい」という思いを募らせていた女性は、理由がわかり、納得できたといいます。

一方、線路には犬が反応するほどの電流が流れる場合があるということを知らない人も多いのではないかと思い、「フォロワーさんたちにお知らせするつもり」でツイートしました。

ツイートは4万件以上リツイートされるなどし、拡散されました。







「犬の散歩はこちらが気を付けるのが合理的」

反響の中には、「看板設置などの対策を鉄道会社が取った方がいいのではないか」という意見もありましたが、女性は「設置するにもお金がかかる。『線路には犬が反応するほどの電流が流れる場合がある』ということが周知され、飼い犬を連れて踏切を渡るときには、できれば犬を抱っこしたり、電車の通過後すぐに渡らないなどの対策を、飼い主側がしていければいいのでは」と話します。

「人間は必ず靴を履いて歩いています。そういう前提をもって鉄道会社さんは安全対策をしているはずです。犬の散歩については、こちらが気を付けるのが合理的かなと思います」

また、同じような経験をした飼い主からの反応もありました。中でも印象に残っているのは「いつも抱っこをせがんでくるのを『仕方ないなあ。わがままだなあ』と思っていたけど、(マリナちゃんと同じ理由なら)これからは『あなたのため』と思ってだっこできるようになった」という趣旨のものでした。

「納得したことについて一人で抱えておかず、たくさんの人に見てもらうことで派生していく話があることに感激しました」






レールには常に電流、人には「問題ない」
https://withnews.jp/article/f0220516000qq000000000000000W07n10201qq000024726A