新型コロナウイルスによって経済状況が変化した結果、副業を認める企業が増えつつあることもあり、勤務先とは別にもう一つの仕事を始めたサラリーマンも少なくないだろう。ところが、この機運に水を差すような、所得税の法令解釈を一部改正する案が提示されている。俳人で著作家の日野百草氏が、実質的には税負担と痛税感ばかりが増すかもしれない、300万円に達しない副業を事業所得ではなく雑所得とする法令解釈の改正案について考えた。

 ついに、サラリーマンの副業が国税庁に狙われた。

 このままの改正案なら、金額が300万円を超えない副業は国から「事業所得」でなく「雑所得」として一律に扱われることになる、かもしれない。税の水平的、公平性のために、という理由なのだろうが、生活に少しでもゆとりが欲しくて始めた副業によって税負担が重く感じられる本末転倒な労働実態を生み出してしまう、かもしれない。

 重ねて「かもしれない」をつけたが、これは現状あくまで「案」だからである。まだ意見を出すことも、変えることだってできるかもしれないからだ。

(中略)

 そうした人々の副業が、このままでは300万円を超えない場合、一律に事業所得でなく雑所得として扱われるかもしれない。記憶に新しいところでは、消費税免税事業者が消費税を納めることになる(簡便に記した)インボイス制度が2023年度10月1日から導入されることで大揉めの昨今、またぞろ国税庁は一般国民、それも今度はサラリーマンを狙い撃ちに来た。

 改正案の概要は以下の通り。

〈業務に係る雑所得の範囲に、営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得が含まれることを明確化します。〉

〈また、事業所得と業務に係る雑所得の判定について、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定すること、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱うこととします。〉

 つまり、この案の通りなら、これまで副業を「事業所得」として申告していたサラリーマンの多くは「雑所得」として申告するか、そうでなくとも「雑所得」と判断されることになる。「多くは」と書いたが副業で300万円以上を稼ぐサラリーマンというのはごくわずかだろう。実際、ごく一部の事業成功者を除けばあくまで副業であり、いわゆる「生活の足し」「夢(独立、専業化など)のため」の額であろう。

■副業者にとって「損益通算」できなくなるのは痛手

 原則的に「雑所得」とは「事業所得」「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「給与所得」「退職所得」「山林所得」「譲渡所得」「一時所得」のいずれにも当てはまらない所得を指すが、国税庁の言う通り〈その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうか〉にあたらないと判断されると「事業所得」でなく「雑所得」となる。申告は自由だが、その判断は税務署次第ということだ。

(中略)

 この改正案が通ればおおむね「300万円以下の副業は雑所得」として扱われるだろう。あえて専門的には異なることを承知で書くが、これは「事実上の増税」と言ってもいい。

 ちなみに「不動産所得」は「事業所得」と別で兼業地主や大家、不動産投資は除外されるため改正案には含まれない。正当な理由があるのはわかるが国税、敵に回したくない相手をよく見定めている、と考えるのは穿ち過ぎか。それでなくとも日本は国際比較調査で中間層の痛税感が強いとされているのに、その傾向をさらに強めることになるのかもしれない。

 この改正案が通れば300万円以下の副業所得は基本「雑所得」となるため「青色申告」はもちろん「損益通算」も出来ない。「青色申告特別控除」は10万円から65万円まで受けられるが「雑所得」となればその特別控除は受けられず、事業種別にもよるが最大税率55%という高い税率を課せられる。もちろん「特に反証がない限り」というエクスキューズはついているが、こうした税務署に対しての「反証」がどれだけ有効か、は長く自営業をしている方ならご承知のことだろう。

 また副業の多くは事業所得での申告だとしても白色申告(基礎控除48万円)だと思うが、青色であれ白色であれ、副業者にとっては後者の「損益通算」ができなくなることが一番厳しいかもしれない。(以下ソース)

8/9(火) 7:15配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/eaddd10d24de829b5ae3221678db72a564b6e1cb