2022.11.14 PeacockBlue K.K. 瓜生洋明


世界的に見てもめずらしい速度無制限区間が設けられているドイツの「アウトバーン」。ドイツの自動車文化とは切っても切れない関係にある速度無制限区間ですが、現在見直しを求める声が上がっているといいます。
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速度無制限が特徴の「アウトバーン」に速度制限の声


 ドイツの「アウトバーン」には、世界的に見てもめずらしい速度無制限区間が設けられています。
 
 ドイツの自動車文化とは切っても切れない関係にある「アウトバーン」の速度無制限ですが、現在見直しを求める声が上がっているといいます。

 自動車業界には「道がクルマをつくる」という有名な格言があります。

 その土地の道路状況や風土、国民性などがクルマづくりに色濃く反映されるという意味合いの言葉ですが、ドイツ車にもそれは当てはまります。

 一般的に、ドイツ車は高速走行時の安定性やハンドリングに優れるといわれていますが、そうしたドイツ車全体の特徴を形作ってきたもののひとつはアウトバーンにあります。

 アウトバーンはドイツを中心に、一部はスイスやオーストリアにもつながる高速道路です。

 その大きな特徴は速度無制限区間が存在することでありアウトバーンがそのほかの国の高速道路と決定的に異なる部分として知られています。

 実際には、アウトバーンのすべての区間が速度無制限というわけではなく、また速度無制限区間であっても130km/hでの走行が推奨されているため、200km/hを超えるような速度で走るクルマはそれほど多くはありません。

 ただ、ドイツで販売されるクルマのほとんどはアウトバーンでの超高速走行に対応できるように設計されており、それが結果として前述したようなドイツ車の特徴を決定づけています。

 日本と同様に、ドイツにとって自動車産業は国の生命線ともいえる基幹産業のひとつとなっていますが、そうなるまでの背景にアウトバーンの存在が挙げられます。

 一方、アウトバーンの速度無制限区間に対して、現在世界的に進められている脱炭素化の観点から、見直しを求める動きが出ています。

 ほとんどのクルマは100km/h以下での走行時にもっとも燃費が良くなるように設計されているため、200km/hを超えるような速度で走行することは、必要以上に燃料を消費することになります。

 また、実際には100km/h以下での走行がほとんどであったとしてもアウトバーンの速度無制限区間を走行する可能性がある以上、高速走行にも対応できるだけの強力なエンジンを搭載し、それ以外の各種部品の強度や耐久性も強化しなければなりません。

 つまり、速度無制限の「アウトバーン」が存在することにより、脱炭素化を阻害しているのではという指摘がなされているわけです。

 実際に、ドイツ自動車連盟(ADAC)が2022年5月に公表したアンケートではアウトバーンの速度制限に賛成する声が全体の52%を占め、反対派の44%を上回る結果となりました。

 脱炭素化は人類が取り組むべき重要課題である一方で、ドイツの自動車文化を象徴する存在であったアウトバーンの速度無制限区間を見直しことは、ドイツの人々にとっても決して簡単なことではありません。

 そのため当面の間は、賛成派と反対派の間で激しい議論が交わされていくものと見られています。

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