衆院憲法審査会は1日、緊急事態条項に関する論点を整理した。憲法改正に前向きな自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の4党は憲法改正原案の作成に向けて、「一歩前進だ」と評価した。ただ、論点整理では「改憲4党」間の溝も浮き彫りとなった。

 審査会の冒頭、衆院法制局が各党のこれまでの発言を整理した「緊急事態に関する論点」という資料を提示し、橘幸信局長が説明した。緊急事態における国会議員の任期延長の必要性や緊急事態の範囲、司法の関与などについて各党の主張を列挙した。

 緊急事態の対象範囲など多くで共通する4党だが、内閣の権限を強化する緊急政令・緊急財政処分では意見が分かれた。自民や維新が必要性を訴えたものの、公明が反対したため、議論の中心が議員任期延長に変更された経緯がある。自民のベテラン議員は「公明のせいで議論が矮小(わいしょう)化された」と不満をもらした。議員任期延長をめぐる裁判所の関与についても4党は一致していない。

 論点整理は、改憲手続き上は必要ないが、4党が憲法改正原案の作成に向けた意見集約につなげようと、衆院法制局にとりまとめを要請していた。

 国民民主の玉木雄一郎代表は「論点整理ができたことは画期的だ。できるだけ多くの論点で合意を得て、憲法改正の条文案作りに入るべきだ」と述べた。維新の馬場伸幸代表も「緊急事態条項について(論点を)ピンどめできた。一歩前進した」と評価した。

 だが、4党ペースで議論が進むことに立憲民主党や共産党は反発している。立憲の中川正春氏は討議で緊急事態の対応策として参院の緊急集会や国会法改正を示し、「議員任期延長のみにこだわるべきではない」と主張。終了後、記者団に「議員任期の話だけ条文化しても審査会のコンセンサス(総意)はできない」と述べて4党をけん制した。共産の赤嶺政賢氏も「自分たちが進めたいテーマに沿う議論だけを取り上げて、これからの議論を方向づけるようなもので、容認できない」と述べた。

 改憲論議に前のめりな維新や国民民主と距離がある公明の北側一雄氏は「さらに議論を深め、できるだけ多くの会派による合意形成を図っていきたい」と述べ、野党第1党の立憲の理解も得たい考えをにじませた。自民の新藤義孝氏も言葉を選びながら「議論が整理できて大変良かった。ただ、何かの形ができたということではなく、あくまで議論を丁寧に進めるためのプロセスの一環だ」と述べた。【加藤明子、樋口淳也】
毎日新聞 2022/12/1 17:43(最終更新 12/1 17:44) 1013文字
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