静岡県裾野市の私立「さくら保育園」で園児を虐待したとして、暴行容疑で保育士3人=退職=が逮捕された事件で、園が6~7月に虐待行為に関する内部通報を受けながら市や県警に通報していなかった疑いがあることが5日、市関係者への取材で分かった。市は8月に情報提供を受けるまで問題を把握できず、この間も虐待行為が継続していた可能性がある。

市は5日、犯人隠避容疑で桜井利彦園長を刑事告発。県警は今後、詳しい経緯を調べる。

一方、3人による虐待行為が園内でたびたび目撃されていたことが捜査関係者への取材で分かった。園内に虐待行為を捉えた防犯カメラはなく、県警は同僚保育士らの目撃証言に基づき逮捕容疑や被害園児を特定した。捜査関係者によると、3人は暴行容疑をおおむね認めている。逮捕前の園の調査には「しつけのつもりだった」と話していた。

市関係者によると、6~7月ごろ「不適切な保育がされている」との趣旨の内部通報があった。問題行為が起きていると伝えられた1歳児クラスの見回りの頻度を増やすなどしたが、行為を確認できなかったため、市や県警に連絡しなかった。桜井園長も十分な調査をしなかったとみられる。

その後、8月に内部事情を知る人物が市へ情報提供。市と園による調査の結果、①園児にカッターナイフを見せて脅す②足をつかんで宙づりにする③ズボンを無理やり下ろす――といった虐待行為が確認された。

静岡県警は今月4日、暴行容疑で保育士の女3人を逮捕。5日、同容疑で送検した。

事件を巡っては、3カ月以上にわたり問題を公表しなかった市にも批判が集まっており、村田悠市長は5日、幹部3人を処分する方針を明らかにした。〔共同〕

日本経済新聞 2022年12月5日 18:48 (2022年12月5日 21:06更新)
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