被差別部落の「探訪」動画をヘイト認定、ユーチューブが200本削除 でも類似動画が多数残る理由

 動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿された被差別部落の個人宅などの動画約200本を、運営するグーグルが昨年、「ヘイトスピーチ指針に反する」として削除した。自治体などが削除を要請していたほか、被差別部落の出身者らが削除を求める署名を集めていた。インターネット上で被差別部落をさらす投稿は後を絶たず、出身者らは「世界的な企業が削除に動いた影響は大きいが、類似の投稿は多くある。さらに対策が必要」と訴える(森田真奈子)
◆数十万回再生 「身元調査に利用される」と不安
 昨年11月に削除されたのは民間アカウント「神奈川県人権啓発センター」の動画。2018年から全国各地の被差別部落の街並みを撮影して「部落探訪」のシリーズで投稿し、地名や個人宅、車のナンバー、墓石などがさらされていた。部落解放・人権研究所(大阪市)によると、シリーズは約200本の動画で構成され、一つの動画で数十万回以上の再生もあった。
 ユーチューブ側は取材に対し、削除理由を「ヘイトスピーチの指針で、社会的階層などの特性に基づいた差別を助長するコンテンツは禁止している」とする。
  被差別部落の出身者や支援者らでつくる団体「ABDARC(アブダーク)」によると、動画を巡っては「身元調査に利用され、結婚や就職で差別されるのでは」との不安の声が多い。「子どもが身近な被差別部落を知ろうとして動画をみていた」との事例もあったという。
◆投稿者は地名リストの書籍化目指す
 アカウントを運営するのは、被差別部落の地名リストのネット掲載や書籍化を試みる川崎市の出版社「示現舎じげんしゃ」代表の男性。東京地裁は21年9月、これらを違法として削除や出版禁止を命じる判決を出した。双方が控訴し、東京高裁で係争中だ。ユーチューブに投稿された動画は訴訟の対象となっておらず、神奈川県や東京都など多くの自治体が「人権侵害」として、法務局を通してユーチューブ側に削除を求めてきたが、対応されなかった。
 アブダークは世論の後押しを得ようと昨年11月、ネットで署名運動を開始。約2週間で2万8000筆が集まり、動画が削除された。団体の川口泰司さん(44)は「家や車が映され、震え上がる当事者も多くいた。時間がかかり過ぎたが、皆の声が削除につながってうれしい」。一方で、類似の動画が多数残っており、「ユーチューブは、被差別部落をさらす動画は許されないと明示して」と求める。
 アカウントを運営する男性は取材に「(差別助長などの)削除理由は意味が分からないが、多くの要請があったと知っていたので削除には驚いてはいない」と話した。
◆国は「削除要請対象」でも自主規制頼み
 部落差別問題では、特に2010年代からネット上で地名をさらされる問題が深刻化した。16年に施行された部落差別解消推進法は、現在もなお部落差別が存在するとして「情報化の進展」への対応を定める。国は18年、被差別部落の場所をさらす投稿は「原則として削除要請の対象」との方針を策定。ただ実際には、サイト管理者らの自主規制に委ねられ、放置されている投稿も多い。
 法務省人権擁護局によると、被差別部落に関する投稿はユーチューブやツイッターなど国外事業者のサイトで削除率が低い。担当者は「日本固有の課題で理解されにくい」と説明する。実際、ユーチューブのヘイトスピーチ指針は世界共通の内容だ。差別の具体例として国籍や社会的階層、障害、ジェンダーなどを挙げているが、被差別部落は明記されていない。
◆違法な差別が放置されない仕組みを
 人権問題に詳しい北口末広・近畿大主任教授は「ユーチューブは情報量が非常に多く、管理側が地域特有の差別問題まで対応できていない。実情にあった指針をつくり、差別投稿に対応するべきだ」と指摘する。
 示現舎代表の男性は、削除された動画と同内容の記事をブログで公開し続け、別の配信サイトで動画の再公開も始めている。北口教授は「サイトの自主規制だけでなく、差別の定義を明確にし、違法として禁止する法整備が必要。その上で、違法な差別が放置されない仕組みを検討するべきだ」と話した。

東京新聞 2023年1月22日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/226631
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