0001蚤の市 ★
2023/02/17(金) 06:35:33.62ID:6DSMFA3m9要求書を受け取った日立製作所の田中憲一執行役常務㊨(16日、東京都千代田区)
2023年の春季労使交渉で日立製作所やパナソニックホールディングスなど主要な製造業の労働組合が16日までに要求書を経営側に提出した。過去最高や20年以上ぶりの賃上げ要求を掲げる労組が相次いだ。歴史的なインフレ下で高い賃上げ意向を交渉の本格化前に表明する経営側の動きが広がる。今後約1カ月間にわたる交渉で、各社が物価上昇分に迫る高い賃上げ率をどこまで回答するかが焦点となる。
日立の労組は16日、23年春季交渉の要求書を経営側に提出した。基本給のベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分として月7000円(賃金維持分含む賃上げ率は3.9%)を要求した。前年比2.3倍に引き上げ、月7000円だった1998年以来25年ぶりの高水準となった。
パナソニックHDの労組も同日、前年比2.3倍の月7000円のベアを求める要求書を提出した。会見した福沢邦治中央執行委員長は「今の物価上昇の局面では組合員の皆さんの生活が厳しくなっているのでそこを改善していく」と高い賃上げ要求の理由を述べた。
16日までに要求内容が明らかになった主要製造業18労組では自動車を中心に過去最高水準を含め6割超の労組が20年以上ぶりの高水準を掲げた。新型コロナウイルス禍からの業績回復を受け前年を上回る要求が相次いだ22年からより踏み込んだ水準となった。
日産自動車の労組は賃上げ率約3%相当の月1万2000円を要求する。過去最高だった15年と同水準だ。マツダの労組も賃上げ率約4%に相当する月1万3000円を要求する。現行の人事制度となった03年以降で最高額だ。
労組が高水準の要求を掲げる背景にあるのは急速に進む食品やエネルギーなどの物価上昇だ。消費者物価総合指数(持ち家の家賃換算分除く)は22年通年で前年比3%増と8年ぶりの上昇率となった。実質賃金は22年に前年比0.9%減と2年ぶりのマイナスとなった。足元でも物価高は続いており、23年春季交渉で高水準の賃上げを獲得できなければ、実質賃金の目減りが続くことになる可能性もある。
経営者側も物価高への思いはおおむね共通する。6%を超える賃上げ意向を示すサントリーホールディングスの新浪剛史社長も「物価高で今までとは風景が変わった。社員にしっかりと安心して生活をしてもらう」と話す。
23年春季交渉は早期に高い賃上げを表明する経営者側が相次ぐ異例の展開にもなっている。物価高に加えて、優秀な人材の確保やつなぎとめに危機感を抱いているためだ。
クラレは9日に管理職を除く国内約4000人を対象に8%程度の賃上げを実施すると明らかにした。川原仁社長は「物価が上昇するなかで日本は海外に比べて賃金が低く抑えられている」とした上で、「価値を生み出す源泉としての人的資本にしっかりと投資、還元をしていきたい」とする。
「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは国内外の給与制度を3月に統一し、国内従業員の年収を最大4割引き上げる。日揮ホールディングスもベアなどで4月以降月額約10%の賃上げ予定だ。経済協力開発機構(OECD)によると、21年の日本の働き手の平均年収は加盟国平均より低い34カ国中24位。先進国の中で低水準で人材獲得の面でも国際競争力は低い。
労務行政研究所が企業の労使などに実施した調査によると、23年の春季交渉についての経営側の賃上げ率見通しは平均2.75%で労働側の見通しを0.01ポイント上回った。経営側の見通しが労組見通しを上回るのは好業績に沸いた17年以来、6年ぶり。経営側の危機感の強さを示している。
ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「歴史的な物価高のなか経営側は人への投資に積極的な姿勢をアピールして好感度を高め人材確保につなげる狙いもある」とする。
長引く資源高や部材不足など事業環境への逆風も強まるなか、主要企業の経営側が賃上げをどこまで実現できるか。働き手の約7割が所属する中小企業の賃上げや、非正規雇用の待遇改善などにも波及する可能性があり、主要企業の労使交渉への注目が一段と増している。
日本経済新聞 2023年2月16日 20:00 (2023年2月17日 5:25更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1433B0U3A210C2000000/