重大少年事件の記録を「特別保存」(永久保存)する規程を設けながら、なぜ全国各地の裁判所は捨ててしまったのか-。問題が明らかになる契機となった神戸連続児童殺傷事件(1997年)の記録廃棄について、神戸家裁で最終的に決断した元首席書記官の男性にたどり着いた。元職員らに取材を重ねると、規程の曖昧な運用とともに、半ば機械的に廃棄された可能性が浮かび上がる。

 ■所長決済の印影欄なかった

 「そりゃ忘れませんよ」。神戸家裁で少年首席書記官だった男性は、同事件の記録廃棄の事実について問うと口を開き、こう続けた。「私が(書類に)判を押し、記録を見送った」

 少年事件記録は成人の刑事裁判と違って保存期限を定める法律がなく「事件記録等保存規程」という最高裁の内規により、保存は少年が26歳になるまでとされている。連続児童殺傷事件の場合は2008年。廃棄は11年2月28日とされる。その根拠としては、家裁の旧システムのデータだけが明らかになっている。

 同規程によると、廃棄は「首席書記官の指示」によるとされ、トップの家裁所長に関する文言はない。男性は「所長(決裁)の印影欄はなかった。声はかけているが」と話す。

 犯罪白書によると、一昨年に保護処分を受けたのは1万人以上。1家裁が保存する少年事件記録は、単純計算でも年間3桁に上り、そのほぼ全てが廃棄されているのが現状だ。男性は、膨大な量の中に連続児童殺傷事件の記録があることを認識しながら、廃棄したことになる。

 ■手続き通り「最高裁にも上申」

 今振り返って廃棄をどう思うか-と尋ねると、男性は語気を強めた。「不適法で処分していたらアレですが、(保存)期限は満了していた。廃棄は、誰かがやらないといけませんので」。あくまで、職務を忠実に果たした結果だと言いたげだった。

 手続きとして「最高裁に廃棄目録は送っている」という。「(少年事件の記録を)全部廃棄する時は上申するようにしている。それは決まってることやから」


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神戸新聞2023/3/18 20:10
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202303/0016155988.shtml