広島県内で今春、マダニなどを介した感染症の報告が増えている。
4月以降、日本紅斑熱(こうはんねつ)とつつが虫病の報告は計10件となり、直近10年間で最も多い。
尾道市の皮膚科医は、感染はなかったものの15匹に吸い付かれたケースも診察。「マダニが人の生活圏に入り込んでいる」と警鐘を鳴らす。
県の感染症週報によると、5月7日までの6週間分で日本紅斑熱が9件に上った。
保健所別では福山市3件▽県東部3件▽呉市2件▽広島市1件―。つつが虫病は県北部の1件だった。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)はなかった。
日本紅斑熱は昨年の同時期の4件から倍増した。今月は福山市の70代女性が日本紅斑熱を発症し亡くなった。
浜中皮ふ科クリニック(尾道市)の浜中和子院長はことし、今月15日までにマダニにかまれた人を25人診察した。
すべてのマダニが病原性を持つわけではないが「春にこんなに診察することはなかった。異常事態だ」と訴える。
イノシシなどの野生動物の市街地への侵入に伴い、動物の血を吸うマダニも、人の近くの草むらや畑に生息域を拡大しているとみる。
県感染症・疾病管理センターによると、日本紅斑熱の場合は感染から2~8日後に発熱や発疹などの症状が現れる。
野外活動時に長袖長ズボンを着用するなどマダニを服の中に入れない対策と、症状が出た場合の素早い受診を呼びかけている。