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「早生まれ」の子どもに対応 日本陸連が初の育成指針
2018年12月3日 17時39分
陸上競技に取り組んでいる「早生まれ」の子どもたちが、同学年の子より発育が遅いことで結果を残せず、競技をやめてしまわないように、日本陸上競技連盟は、中長期的な視点での指導の大切さなどを盛り込んだ初めての育成指針を作りました。
日本陸連は、多くの子どもたちに陸上競技を続けてもらうため、初めての育成指針を作り3日、東京北区で開いた会議で学校の教員など全国の強化担当者に説明しました。
この中で、トップ選手が優れた結果を出すのは高校生以降のことが多く、才能を早期に見極めるのは難しいことが報告されました。
これを踏まえて、育成指針では「小学校期」や「中学校期」それに「高校期」など大きく6つのステージに分け、中長期的な視点で指導することが重要だとしています。
また、1月1日から4月1日までの間に生まれた「早生まれ」の子どもたちは、幼いころは同学年の子に比べ発育が遅く、結果を残せずに競技をやめてしまう場合もあることから、指導者が一人ひとりの成長の違いを認識する必要があるとしています。
出席者は「目先の結果にとらわれることなく楽しみながら陸上を続けられるようにしたい」と話していました。
日本陸連の強化委員会の山崎一彦ディレクターは「特に早生まれの子には『運動が苦手だ』と思ってほしくない。長く競技を続けられるように私たち大人が支えていきたい」と話していました。
背景には日本陸連の危機感
日本陸上競技連盟が初めて指針を作った背景には、活躍できる力を秘めた選手が早い段階で競技をやめてしまっているのではないかという危機感があります。
日本陸連は6年前、その年に開かれた各世代の全国大会に出場した選手を対象に、生まれた月とその割合を調べました。その結果、高校生までの世代では、全国大会の出場者のうち、「早生まれ」にあたる1月から3月に生まれた選手が1割前後にとどまっていたことが分かりました。
このうち小学生の全国大会では、1月から3月生まれの選手の割合が1割に満たないのに対し、4月から6月生まれの選手が4割以上を占めたということです。
一方で、過去の世界選手権やオリンピックに出場したトップ選手を対象に同様の調査を行ったところ、生まれた月の偏りはほとんどないことが分かりました。
さらに、トップ選手の競技歴も調べたところ、小学生のころから陸上競技をしていたのは16.3%にとどまっていました。中学生になると全体の79.8%が陸上競技をしていましたが、全国大会に出場した経験がある選手は40.4%と半数にも達していませんでした。
こうしたことから、日本陸連は少なくとも高校まで競技を続けなければ才能を見極めるのは難しいと判断し、選手が小学校や中学校で競技をやめてしまうのを防ぐ必要があると考えたのです。
また、日本陸連では、育成指針を作るだけでなく、陸上競技のジュニアオリンピックの出場条件をことし10月の大会に合わせて初めて見直しました。
これまでの大会では中学生が学年ごとに出場してきましたが、ことしからは、「早生まれ」の選手は1つ下の学年の4月から12月生まれの選手と同じ区分で出場しました。
この結果、以前の区分だと8位入賞に届かない記録だった「早生まれ」の選手が新たな区分で3位以内に入り、表彰台に上がったケースもありました。
専門家「諦めさせないことが重要」
発育とスポーツの関係に詳しい日本大学の森丘保典教授は「競技のだいご味や才能に気付くことなく陸上競技をやめてしまう子もいる。子どもたちは、同じ学年の中でも生まれた月によって成長に大きな偏りがあるのに、そこに個人差も加わる。勝敗に一喜一憂してやめてしまうと、才能があるかどうかも分からなくなってしまう」と指摘しています。
そのうえで、「指導者は、いろいろな子がいるのだという認識を持って『焦らなくてもいいよ』と声をかけながら指導して、諦めさせないことが重要だ」と話しています。
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