東京電力福島第1原発3号機の格納容器底部で水中ロボットが撮影した、燃料デブリの可能性が高い物体=7月22日
http://www.sankei.com/images/news/170822/prm1708220002-p1.jpg
デブリは見えたが、取り出せるのか−。東京電力福島第1原発3号機で、溶け落ちた核燃料(デブリ)とみられる物体が初めて撮影されたのは7月下旬。原子力損害賠償・廃炉等支援機構は、デブリの取り出しについて原子炉格納容器を水で満たさない「気中工法」で行うことを提案、政府と東電は9月中に方針を決定する。しかし、前例のない作業に加えてデブリの情報は依然少なく、先は見通せないままだ。(社会部編集委員 鵜野光博)
■「3号機の映像にショック」
「構造物が落ちているとはこういうことなのかと、実際に映像を見てショックを受けた」
福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは7月27日の記者会見で、3号機のロボット調査で撮影された原子炉格納容器内部の様子を見た印象を率直に語り、「これをどうやって取り出すか。手が出せませんでしたではなく、慎重にしっかりやっていかなくてはと気を引き締めた」と続けた。
東電は7月19〜22日、3号機で水中遊泳型ロボットによる調査を実施。圧力容器下部からつららのように垂れ下がる物体や、格納容器の底部に堆積した小石のような物体の撮影に成功し、これらがデブリの可能性が高いとしている。一方で、作業用足場が崩落するなど、格納容器内部の損傷の大きさも改めて明らかになった。
■「冠水」は難度高く
東電は1、2号機でもロボット調査を行ったが、デブリの一部を映像で確認できたのは3号機だけ。宇宙線「ミュオン」を使った測定などで各号機のデブリの位置を推測している。
支援機構のまとめによると、推測では1〜3号機とも炉心部にデブリはほとんどなく、1号機は圧力容器の底部に少量、格納容器の底部に大部分のデブリが存在している。2号機は圧力容器の底部に多量のデブリがあり、格納容器底部にも少量が落下。3号機は2号機よりも格納容器底部に多くのデブリがあるとみられる。
支援機構は取り出し方針案として、格納容器を水で満たして放射線の影響を減らし、上からデブリを取り出す「冠水−上アクセス工法」▽水で満たさず上から取り出す「気中−上アクセス工法」▽水で満たさず横から取り出す「気中−横アクセス工法」−の3つを検討してきた。
7月下旬には、最後の気中−横アクセス工法で格納容器底部のデブリを優先して取り出すべきだと提案。格納容器を水で満たすには貫通部や損傷部を補修する必要があるが、遠隔補修は技術的に難しく、作業員の被曝(ひばく)量も多くなると判断した。ただし、「将来、冠水工法の実現性を改めて議論することも視野に入れる」としている。
実際には、デブリに水をかけながら遠隔操作のロボットアームで掻き出すことが想定されているが、必要な機材の開発はこれからの課題だ。
■「国際的にも経験がない」
デブリ取り出し方針をめぐる動きに関し、廃炉工程の安全性などを監視する原子力規制委員会の田中俊一委員長は8月2日の会見で「私が知る限りにおいて、そう生産性のある方法が提案されたとは理解していない」とコメントし、もっと具体的な手順などが示された後で規制委として関わる考えを示した。
また、「個人的に申し上げると」と前置きした上で、「膨大な放射能を内蔵した使用済み燃料だから、対策は非常に大変なことになる。何か掻き出して済むというものではない」「それ(冠水)なしにやるのは国際的に見ても今まで経験がない。できるかどうか、私には分からない」と懸念の言葉を重ねた。
冒頭の増田プレジデントは、報道陣から現時点でのデブリ情報の少なさなどを指摘されると「ここまでの6年でやってきた進捗(しんちょく)は大きい。原子炉の中の様子も見えてきた。これからの1年は成果が出しやすいと思っている」と反論。取り出し着手が平成33年とされていることについては「非常にチャレンジングなところがある」と認めつつ、「工程ありきではなく、無理なことは無理と言いつつ、しっかり情報を共有しながら支援機構などと仕事を進めていきたい」と前向きに語った。
配信2017.8.22 14:00更新
産経ニュース
http://www.sankei.com/premium/news/170822/prm1708220002-n1.html
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デブリは見えたが、取り出せるのか−。東京電力福島第1原発3号機で、溶け落ちた核燃料(デブリ)とみられる物体が初めて撮影されたのは7月下旬。原子力損害賠償・廃炉等支援機構は、デブリの取り出しについて原子炉格納容器を水で満たさない「気中工法」で行うことを提案、政府と東電は9月中に方針を決定する。しかし、前例のない作業に加えてデブリの情報は依然少なく、先は見通せないままだ。(社会部編集委員 鵜野光博)
■「3号機の映像にショック」
「構造物が落ちているとはこういうことなのかと、実際に映像を見てショックを受けた」
福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは7月27日の記者会見で、3号機のロボット調査で撮影された原子炉格納容器内部の様子を見た印象を率直に語り、「これをどうやって取り出すか。手が出せませんでしたではなく、慎重にしっかりやっていかなくてはと気を引き締めた」と続けた。
東電は7月19〜22日、3号機で水中遊泳型ロボットによる調査を実施。圧力容器下部からつららのように垂れ下がる物体や、格納容器の底部に堆積した小石のような物体の撮影に成功し、これらがデブリの可能性が高いとしている。一方で、作業用足場が崩落するなど、格納容器内部の損傷の大きさも改めて明らかになった。
■「冠水」は難度高く
東電は1、2号機でもロボット調査を行ったが、デブリの一部を映像で確認できたのは3号機だけ。宇宙線「ミュオン」を使った測定などで各号機のデブリの位置を推測している。
支援機構のまとめによると、推測では1〜3号機とも炉心部にデブリはほとんどなく、1号機は圧力容器の底部に少量、格納容器の底部に大部分のデブリが存在している。2号機は圧力容器の底部に多量のデブリがあり、格納容器底部にも少量が落下。3号機は2号機よりも格納容器底部に多くのデブリがあるとみられる。
支援機構は取り出し方針案として、格納容器を水で満たして放射線の影響を減らし、上からデブリを取り出す「冠水−上アクセス工法」▽水で満たさず上から取り出す「気中−上アクセス工法」▽水で満たさず横から取り出す「気中−横アクセス工法」−の3つを検討してきた。
7月下旬には、最後の気中−横アクセス工法で格納容器底部のデブリを優先して取り出すべきだと提案。格納容器を水で満たすには貫通部や損傷部を補修する必要があるが、遠隔補修は技術的に難しく、作業員の被曝(ひばく)量も多くなると判断した。ただし、「将来、冠水工法の実現性を改めて議論することも視野に入れる」としている。
実際には、デブリに水をかけながら遠隔操作のロボットアームで掻き出すことが想定されているが、必要な機材の開発はこれからの課題だ。
■「国際的にも経験がない」
デブリ取り出し方針をめぐる動きに関し、廃炉工程の安全性などを監視する原子力規制委員会の田中俊一委員長は8月2日の会見で「私が知る限りにおいて、そう生産性のある方法が提案されたとは理解していない」とコメントし、もっと具体的な手順などが示された後で規制委として関わる考えを示した。
また、「個人的に申し上げると」と前置きした上で、「膨大な放射能を内蔵した使用済み燃料だから、対策は非常に大変なことになる。何か掻き出して済むというものではない」「それ(冠水)なしにやるのは国際的に見ても今まで経験がない。できるかどうか、私には分からない」と懸念の言葉を重ねた。
冒頭の増田プレジデントは、報道陣から現時点でのデブリ情報の少なさなどを指摘されると「ここまでの6年でやってきた進捗(しんちょく)は大きい。原子炉の中の様子も見えてきた。これからの1年は成果が出しやすいと思っている」と反論。取り出し着手が平成33年とされていることについては「非常にチャレンジングなところがある」と認めつつ、「工程ありきではなく、無理なことは無理と言いつつ、しっかり情報を共有しながら支援機構などと仕事を進めていきたい」と前向きに語った。
配信2017.8.22 14:00更新
産経ニュース
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