仕事終わりに猫40匹の世話をする女性=中濃地方のアパートの一室で
http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20180209/images/PK2018020802100238_size0.jpg
日本は今、空前の猫ブームを迎えていると言われる。だがその陰で、飼い主の知識不足で近親交配を招き、急激に増えすぎた多頭飼育崩壊が各地で起きている。ピーク時に70匹の猫を飼い、譲渡で40匹まで減らした中濃地方の20代の女性は「こんなに早く産むと思わなかった」と飼い主としての責任を感じている。
アパートの一室のドアを開けると猫特有のふん尿の臭いが鼻を突いた。いすや壁は爪研ぎでボロボロだ。似たような毛色をした猫が、部屋中を動き回っている。
女性がかつて住んでいた部屋だが、今は、猫だけの住まいだ。女性は昨年から別のアパートで寝泊まりしている。猫の部屋代とえさ代だけで月に数万円かかるため、昼間と夜の仕事を掛け持ちし、毎日少なくとも二回、仕事の合間に訪れて世話をしている。
飼い始めたのは七年前のこと。動物愛護ボランティアから、雄の子猫を引き取った。「かわいくて、ひと目で気に入った」。その後、弟が雌猫二匹を近所で拾ってきた。不妊去勢手術をしていなかったため近親交配などで爆発的に増え、四年後に七十匹に激増した。
日本動物愛護協会(東京)はホームページで「人間の都合で不幸な犬や猫を増やさないために不妊去勢手術は必要」などと呼び掛けている。女性は「知っていたが、忘れていた。自分のせいで猫に申し訳ない」とため息をついた。
二〇一五年ごろ、行政を通じて事態を把握した動物愛護ボランティアなどの協力を得て全頭の不妊去勢手術を終え、譲渡を始めたが、もらい手は少ない。
それでも、保健所には連れて行かないという。「かわいそうだから」。関わるボランティア女性は「多頭崩壊の飼い主の中でもかなり責任感を持っている方だが、猫が大きくなってしまうともらい手は見つかりにくい」と肩を落とす。
十二日午前十一時から、女性の飼う猫を中心に、病気やハンディキャップを抱えた猫や犬の譲渡会が、岐阜市岩地の犬のしつけ教室「ONELife(ワンライフ)」で開かれる。(問)ボランティアの天谷さん=※電話番号はソース先確認
◆地域が協力し防いで
一九九四年から全国のペット推定飼育数を調べているペットフード協会(東京)によると、二〇一七年に猫が初めて犬を上回った(猫九百五十万匹、犬八百九十万匹)。一方で、猫の繁殖力の強さは忘れられがちだ。種類によっては生後半年から妊娠可能になり、条件さえ合えば年中、繁殖する。
多頭飼いは、不妊去勢手術をせず何匹も飼ううち、近親交配などで増えてしまうことがきっかけになる。日本動物愛護協会元理事の各務能正さん(68)=多治見市=は「近所に知られずに五十匹、百匹と飼っている人は至る所にいる」と指摘する。
県内だけでも、一人暮らしの高齢者や精神的にペットを手放せなくなった飼い主らが、追い詰められて行政やボランティアに助けを求めるケースが近年、増え続けているという。
個人所有のペット相手では行政は指導以上の介入はできず、ボランティアによる譲渡活動も追い付かないのが現状だ。本来は飼い主の責任だが、各務さんは「高齢者を地域で見守るのと同じように、周囲が手遅れにならないうちに気づき、手を差し伸べる必要が生じている」と話している。
2018年2月9日
中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20180209/CK2018020902000036.html
http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20180209/images/PK2018020802100238_size0.jpg
日本は今、空前の猫ブームを迎えていると言われる。だがその陰で、飼い主の知識不足で近親交配を招き、急激に増えすぎた多頭飼育崩壊が各地で起きている。ピーク時に70匹の猫を飼い、譲渡で40匹まで減らした中濃地方の20代の女性は「こんなに早く産むと思わなかった」と飼い主としての責任を感じている。
アパートの一室のドアを開けると猫特有のふん尿の臭いが鼻を突いた。いすや壁は爪研ぎでボロボロだ。似たような毛色をした猫が、部屋中を動き回っている。
女性がかつて住んでいた部屋だが、今は、猫だけの住まいだ。女性は昨年から別のアパートで寝泊まりしている。猫の部屋代とえさ代だけで月に数万円かかるため、昼間と夜の仕事を掛け持ちし、毎日少なくとも二回、仕事の合間に訪れて世話をしている。
飼い始めたのは七年前のこと。動物愛護ボランティアから、雄の子猫を引き取った。「かわいくて、ひと目で気に入った」。その後、弟が雌猫二匹を近所で拾ってきた。不妊去勢手術をしていなかったため近親交配などで爆発的に増え、四年後に七十匹に激増した。
日本動物愛護協会(東京)はホームページで「人間の都合で不幸な犬や猫を増やさないために不妊去勢手術は必要」などと呼び掛けている。女性は「知っていたが、忘れていた。自分のせいで猫に申し訳ない」とため息をついた。
二〇一五年ごろ、行政を通じて事態を把握した動物愛護ボランティアなどの協力を得て全頭の不妊去勢手術を終え、譲渡を始めたが、もらい手は少ない。
それでも、保健所には連れて行かないという。「かわいそうだから」。関わるボランティア女性は「多頭崩壊の飼い主の中でもかなり責任感を持っている方だが、猫が大きくなってしまうともらい手は見つかりにくい」と肩を落とす。
十二日午前十一時から、女性の飼う猫を中心に、病気やハンディキャップを抱えた猫や犬の譲渡会が、岐阜市岩地の犬のしつけ教室「ONELife(ワンライフ)」で開かれる。(問)ボランティアの天谷さん=※電話番号はソース先確認
◆地域が協力し防いで
一九九四年から全国のペット推定飼育数を調べているペットフード協会(東京)によると、二〇一七年に猫が初めて犬を上回った(猫九百五十万匹、犬八百九十万匹)。一方で、猫の繁殖力の強さは忘れられがちだ。種類によっては生後半年から妊娠可能になり、条件さえ合えば年中、繁殖する。
多頭飼いは、不妊去勢手術をせず何匹も飼ううち、近親交配などで増えてしまうことがきっかけになる。日本動物愛護協会元理事の各務能正さん(68)=多治見市=は「近所に知られずに五十匹、百匹と飼っている人は至る所にいる」と指摘する。
県内だけでも、一人暮らしの高齢者や精神的にペットを手放せなくなった飼い主らが、追い詰められて行政やボランティアに助けを求めるケースが近年、増え続けているという。
個人所有のペット相手では行政は指導以上の介入はできず、ボランティアによる譲渡活動も追い付かないのが現状だ。本来は飼い主の責任だが、各務さんは「高齢者を地域で見守るのと同じように、周囲が手遅れにならないうちに気づき、手を差し伸べる必要が生じている」と話している。
2018年2月9日
中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/gifu/20180209/CK2018020902000036.html