【北京・赤間清広】深刻な大気汚染の対策を進める中国が、環境に優しい天然ガスの輸入を急増させている。発電などに使われる液化天然ガス(LNG)の価格は半年で2倍に高騰しており、世界最大のLNG輸入国である日本も打撃を受ける可能性がある。
「青い空を守る戦いに勝利する」。昨年10月の中国共産党大会で習近平国家主席はこう宣言し、経済成長を多少犠牲にしてでも環境改善を実現する決意を示した。
北京など中国北部では毎年、冬になると「暖気」と呼ばれる石炭などを燃料とした集中暖房が始まるため大気汚染が一気に深刻化する。健康被害も広がっており、市民の不満が高まっていた。
習氏の指示を受け、この冬は都市ごとに数値目標まで設定して石炭の使用を厳しく制限。その代替燃料として天然ガスの需要が急伸したというわけだ。
いつもは大気汚染物質で霧がかかったような景色が続く北京では連日、青空が広がり対策の成果が表れている。一方で国内の天然ガスの需給が逼迫(ひっぱく)し、燃料を調達できず操業休止に追い込まれる工場が相次ぐなど各地で混乱も広がっている。
影響は中国内だけにとどまりそうにない。中国の2017年のLNG輸入量は3813万トン。前年に比べ5割近く増え、韓国を抜いて一気に世界2位の輸入国に躍り出た。日本の17年輸入量は8363万トンでまだ倍以上の開きがあるが、中国の需要急増は今後も続くとみられ、「年内にも輸入量で日本に迫る」(エネルギー関係者)との見方も出ている。
中国政府はこれまで中央アジアやミャンマーからパイプラインを引き天然ガスを仕入れてきたが、世界有数の産出国であるロシアと結ぶ新しいパイプラインの建設も始まった。昨年11月の米中首脳会談でもアラスカ地区の天然ガス共同開発など複数の「ガス案件」をまとめるなど世界のガス資源を買いあさりはじめた。
価格もつり上がっている。経済産業省によると、LNGのスポット価格(1回ごとの契約で取引する価格)は昨春時点では5ドル台だったが、秋以降、上昇ペースを速め、今年1月の平均価格は11ドルに急騰した。
日本の電力会社やガス会社はLNGを長期契約しているため、足元の価格が直ちに電気料金などに反映されるわけではないが、中国要因による需給の逼迫が続けば将来的な影響は避けられない。
幸いにも今年は米国やオーストラリアで大型の天然ガス開発計画が複数、生産段階に入る見通しで「中国など新興国の需要増への対応は可能」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)とみられる。
しかし、中国による天然ガスの「爆買い」の勢いは今後も止まりそうにない。日本は圧倒的な輸入量を背景にLNGの価格交渉などで強い発言権を維持してきたが、中国の台頭による存在感低下が懸念される。
2/15(木) 23:28
毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180215-00000086-mai-bus_all
「青い空を守る戦いに勝利する」。昨年10月の中国共産党大会で習近平国家主席はこう宣言し、経済成長を多少犠牲にしてでも環境改善を実現する決意を示した。
北京など中国北部では毎年、冬になると「暖気」と呼ばれる石炭などを燃料とした集中暖房が始まるため大気汚染が一気に深刻化する。健康被害も広がっており、市民の不満が高まっていた。
習氏の指示を受け、この冬は都市ごとに数値目標まで設定して石炭の使用を厳しく制限。その代替燃料として天然ガスの需要が急伸したというわけだ。
いつもは大気汚染物質で霧がかかったような景色が続く北京では連日、青空が広がり対策の成果が表れている。一方で国内の天然ガスの需給が逼迫(ひっぱく)し、燃料を調達できず操業休止に追い込まれる工場が相次ぐなど各地で混乱も広がっている。
影響は中国内だけにとどまりそうにない。中国の2017年のLNG輸入量は3813万トン。前年に比べ5割近く増え、韓国を抜いて一気に世界2位の輸入国に躍り出た。日本の17年輸入量は8363万トンでまだ倍以上の開きがあるが、中国の需要急増は今後も続くとみられ、「年内にも輸入量で日本に迫る」(エネルギー関係者)との見方も出ている。
中国政府はこれまで中央アジアやミャンマーからパイプラインを引き天然ガスを仕入れてきたが、世界有数の産出国であるロシアと結ぶ新しいパイプラインの建設も始まった。昨年11月の米中首脳会談でもアラスカ地区の天然ガス共同開発など複数の「ガス案件」をまとめるなど世界のガス資源を買いあさりはじめた。
価格もつり上がっている。経済産業省によると、LNGのスポット価格(1回ごとの契約で取引する価格)は昨春時点では5ドル台だったが、秋以降、上昇ペースを速め、今年1月の平均価格は11ドルに急騰した。
日本の電力会社やガス会社はLNGを長期契約しているため、足元の価格が直ちに電気料金などに反映されるわけではないが、中国要因による需給の逼迫が続けば将来的な影響は避けられない。
幸いにも今年は米国やオーストラリアで大型の天然ガス開発計画が複数、生産段階に入る見通しで「中国など新興国の需要増への対応は可能」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)とみられる。
しかし、中国による天然ガスの「爆買い」の勢いは今後も止まりそうにない。日本は圧倒的な輸入量を背景にLNGの価格交渉などで強い発言権を維持してきたが、中国の台頭による存在感低下が懸念される。
2/15(木) 23:28
毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180215-00000086-mai-bus_all