http://www.afpbb.com/articles/-/3163218?cx_position=24
2018年2月20日 14:48 発信地:パリ/フランス
【2月20日 AFP】フランス政府は19日、国内のオオカミの生息数を40%増加させる計画を発表した。一方、家畜の羊を心配する山岳地帯の農場経営者の間ではオオカミの駆除を求める声が高まっている。
フランスのタイリクオオカミは1930年代に狩猟によって絶滅したが、現在2000匹前後のオオカミが生息するイタリア経由で1992年に国内に戻り、その後スイスやドイツに拡散した。エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領の中道政権が発表した今回の計画により、同国のオオカミの個体数は現在の推定360匹から2023年までに500匹に増やすことが可能になる。
仏政府によるオオカミ個体数回復計画は、アルプス(Alps)やピレネー(Pyrenees)の山岳地帯の農場経営者らとの対立を引き起こしてきた。農場経営者らは、家畜に対するオオカミの襲撃が重大な金銭的損失をもたらしていると主張している。
こうした怒りの声に応えるため、ハンターらは毎年、全個体数の10%を駆除することが認められており、襲撃が通常よりも頻繁に起こるときは、場合によって、この割合は12%に引き上げられる。
環境保護論者として知られるニコラ・ユロ(Nicolas Hulot)環境・エネルギー・海洋相は、つい最近もオオカミの駆除には「むかむかする」と発言したばかり。だがその一方で、農場経営者らの懸念を考慮に入れることは不可欠であることは認めており、今回の計画をまとめた100ページに及ぶ報告書の序文には、ステファヌ・トラベール(Stephane Travert)農業・食料相と共に「政府は、すべての利害関係者と地方議会が論争を沈静化させ、長期的な共存を可能にしてくれると信じている」との言葉を寄せている。
今回のオオカミ生息数増加計画により、家畜所有者らは家畜保護のために政府の助成金を申請できるようになるが、支給の条件としては、外柵の設置などの防護手段を講じていなければならない。
■昨年オオカミに殺された家畜への補償金は4億円超
1日に平均2〜4キロの肉を食べる捕食動物のオオカミは、山岳地帯の家畜の襲撃被害が急増している原因とされている。
アルプスの地元自治体の公式統計によれば、2016年に同地域で殺された羊は計1万匹。オオカミはシカやイノシシ、家畜を好んで餌とすることが知られている。
オオカミに殺された家畜に対して、国から農場経営者らに給付された損害補償金は2016年に320万ユーロ(約4億2000万円)に達し、2013年比で60%増となった。
研究者らは、オオカミの全個体数の10〜12%を毎年駆除することはオオカミの再生能力には影響しないと主張している。しかし、環境保護論者はこうした駆除が認可されていることに反発を表明。世界自然保護基金(WWF)やフランス自然環境(France Nature Environnement)などを含む自然環境保護団体は、政府には農業圧力団体の働き掛けを拒否する「政治的な勇気が欠如している」と批判した。
オオカミの専門家、ジャンマルク・ランドリ(Jean-Marc Landry)氏は、オオカミは移動性が高く、すぐにアルプスを越えて別の地域に移動することも、政府にとっては頭の痛い問題だと指摘する。
ランドリ氏によると、オオカミはフランスの中央に位置する中央高地(Massif Central)地域ですでに目撃されているが、同地域には国内最大手の牧羊業者らが拠点を置いている。
ランドリ氏はAFPの取材に、「問題は、オオカミが人々に望まれているか否かではなく、ここにいることなのだ」と語った。
「私たちは第3の道について検討し、共存の方法を見つけ出す必要がある」(c)AFP/Amélie BOTTOLLIER-DEPOIS and Adam PLOWRIGHT
仏動物園で飼育されているホッキョクオオカミ(2017年10月14日撮影、資料写真)。(c)AFP/LOIC VENANCE
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2018年2月20日 14:48 発信地:パリ/フランス
【2月20日 AFP】フランス政府は19日、国内のオオカミの生息数を40%増加させる計画を発表した。一方、家畜の羊を心配する山岳地帯の農場経営者の間ではオオカミの駆除を求める声が高まっている。
フランスのタイリクオオカミは1930年代に狩猟によって絶滅したが、現在2000匹前後のオオカミが生息するイタリア経由で1992年に国内に戻り、その後スイスやドイツに拡散した。エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領の中道政権が発表した今回の計画により、同国のオオカミの個体数は現在の推定360匹から2023年までに500匹に増やすことが可能になる。
仏政府によるオオカミ個体数回復計画は、アルプス(Alps)やピレネー(Pyrenees)の山岳地帯の農場経営者らとの対立を引き起こしてきた。農場経営者らは、家畜に対するオオカミの襲撃が重大な金銭的損失をもたらしていると主張している。
こうした怒りの声に応えるため、ハンターらは毎年、全個体数の10%を駆除することが認められており、襲撃が通常よりも頻繁に起こるときは、場合によって、この割合は12%に引き上げられる。
環境保護論者として知られるニコラ・ユロ(Nicolas Hulot)環境・エネルギー・海洋相は、つい最近もオオカミの駆除には「むかむかする」と発言したばかり。だがその一方で、農場経営者らの懸念を考慮に入れることは不可欠であることは認めており、今回の計画をまとめた100ページに及ぶ報告書の序文には、ステファヌ・トラベール(Stephane Travert)農業・食料相と共に「政府は、すべての利害関係者と地方議会が論争を沈静化させ、長期的な共存を可能にしてくれると信じている」との言葉を寄せている。
今回のオオカミ生息数増加計画により、家畜所有者らは家畜保護のために政府の助成金を申請できるようになるが、支給の条件としては、外柵の設置などの防護手段を講じていなければならない。
■昨年オオカミに殺された家畜への補償金は4億円超
1日に平均2〜4キロの肉を食べる捕食動物のオオカミは、山岳地帯の家畜の襲撃被害が急増している原因とされている。
アルプスの地元自治体の公式統計によれば、2016年に同地域で殺された羊は計1万匹。オオカミはシカやイノシシ、家畜を好んで餌とすることが知られている。
オオカミに殺された家畜に対して、国から農場経営者らに給付された損害補償金は2016年に320万ユーロ(約4億2000万円)に達し、2013年比で60%増となった。
研究者らは、オオカミの全個体数の10〜12%を毎年駆除することはオオカミの再生能力には影響しないと主張している。しかし、環境保護論者はこうした駆除が認可されていることに反発を表明。世界自然保護基金(WWF)やフランス自然環境(France Nature Environnement)などを含む自然環境保護団体は、政府には農業圧力団体の働き掛けを拒否する「政治的な勇気が欠如している」と批判した。
オオカミの専門家、ジャンマルク・ランドリ(Jean-Marc Landry)氏は、オオカミは移動性が高く、すぐにアルプスを越えて別の地域に移動することも、政府にとっては頭の痛い問題だと指摘する。
ランドリ氏によると、オオカミはフランスの中央に位置する中央高地(Massif Central)地域ですでに目撃されているが、同地域には国内最大手の牧羊業者らが拠点を置いている。
ランドリ氏はAFPの取材に、「問題は、オオカミが人々に望まれているか否かではなく、ここにいることなのだ」と語った。
「私たちは第3の道について検討し、共存の方法を見つけ出す必要がある」(c)AFP/Amélie BOTTOLLIER-DEPOIS and Adam PLOWRIGHT
仏動物園で飼育されているホッキョクオオカミ(2017年10月14日撮影、資料写真)。(c)AFP/LOIC VENANCE
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