★【社説検証】横田滋さん死去 産経「北の拉致に怒り新た」 東京「柔軟性欠く政府対応」
2020.6.10 09:00
https://www.sankei.com/column/news/200610/clm2006100005-n1.html
北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんの父、横田滋さんが87歳で亡くなった。拉致被害者家族会の初代代表を務め、娘の帰国を祈りながらの死だった。
滋さんが日本銀行新潟支店に勤務していた昭和52年11月、当時13歳だっためぐみさんが県内の中学校からの帰り道で北朝鮮の工作員に拉致された。
めぐみさんが突然姿を消してから、滋さんは妻の早紀江さんとともに娘を探し続けた。
北朝鮮による拉致と判明したのは、事件から19年も後のことだ。以来、横田夫妻は拉致被害の象徴的な存在として全国で講演し、全員帰国を訴え続けた。
拉致された本人はもちろん、その家族の人生も狂わせた重大な人権侵害を許してはならない。
産経は「拉致誘拐という北朝鮮の国家犯罪に怒りを新たにする」と強調した。「怒りを国民全ての思いとして結集し、これをぶつけるべき相手は北朝鮮であり、
独裁者である金正恩朝鮮労働党委員長である」と主張したうえで「国民の怒りを突きつけ、被害者全員の奪還を実現させるのは、日本政府の責務である」と強く求めた。
朝日も「やさしい表情で親の情を貫徹する姿を通じて、北朝鮮問題の現実を知り、被害者に思いを寄せた人々は数知れない。
重く、つらい人道問題の象徴的な存在だった」と滋さんの死を悼んだ。
そして「その無念さに誰もが胸を痛めている。この悲劇を繰り返してはならない」と論考し、
「北朝鮮の非道さを非難するとともに、日本政府には問題の解決へ向けた有効な方策を急ぐよう強く求める」と訴えた。
北朝鮮の金正日総書記は平成14年の日朝首脳会談で拉致の事実を認めて謝罪し、5人の被害者の帰国が実現したが、めぐみさんら8人については死亡が伝えられた。
その後、北朝鮮が遺骨だとして提供した骨は、DNA鑑定で別人のものと判明した。
こうした対応について、毎日は「不誠実で、とうてい信用できるものではなかった」と非難した。
一方、拉致問題に関する安倍晋三政権の外交方針について「柔軟性を欠く対応も目立った」と難じたのは東京だ。
「この問題に精通しているはずの安倍晋三首相が、北朝鮮に圧力一辺倒の対応をしてきた」と批判した。
そのうえで「日本政府は拉致解決を国交正常化交渉の入り口に位置づけ、経済制裁を強化した。
金総書記に謝罪をさせた『成功体験』にこだわりすぎたのではないか」と疑問を示した。
日朝間には、日朝首脳会談での平壌宣言を踏まえ、6年前に結んだ「ストックホルム合意」がある。
この合意には拉致や遺骨問題などを含む包括調査や制裁解除などが盛り込まれた。
朝日は「当時、横田さん夫妻がモンゴルで孫娘と面会したことで機運が生まれ、この合意ができた」と指摘し、
「滋さんの遺志を引き継ぐためにも、安倍政権はこの合意にもとづく交渉を再開させるよう全力を注ぐべきだ」と求めた。
毎日も「厳しさを増す安全保障環境の下での拉致事件の解決は簡単ではない」と強調し、
「政府は、この間の経緯をいったん検証して戦略を立て直す必要がある。早期解決を図るための取り組みを強化すべきだ」と注文した。
これに対して産経は「北朝鮮は今年に入り、短距離弾道ミサイルなどの発射を繰り返して国際社会への挑戦を再開している」と批判した。
そのうえで「政府は自ら膠着(こうちゃく)を破る行動を起こすべきだ。拉致の解決なしに北朝鮮は未来を描けないと理解させる、交渉の原点に返るべきだ」と訴えた。
政府が認定する未帰国の拉致被害者の親で存命なのは、早紀江さんと有本恵子さんの父の明弘さんの2人だけになってしまった。一刻も早い事態の解決が望まれる。(井伊重之)
※以下略
2020.6.10 09:00
https://www.sankei.com/column/news/200610/clm2006100005-n1.html
北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんの父、横田滋さんが87歳で亡くなった。拉致被害者家族会の初代代表を務め、娘の帰国を祈りながらの死だった。
滋さんが日本銀行新潟支店に勤務していた昭和52年11月、当時13歳だっためぐみさんが県内の中学校からの帰り道で北朝鮮の工作員に拉致された。
めぐみさんが突然姿を消してから、滋さんは妻の早紀江さんとともに娘を探し続けた。
北朝鮮による拉致と判明したのは、事件から19年も後のことだ。以来、横田夫妻は拉致被害の象徴的な存在として全国で講演し、全員帰国を訴え続けた。
拉致された本人はもちろん、その家族の人生も狂わせた重大な人権侵害を許してはならない。
産経は「拉致誘拐という北朝鮮の国家犯罪に怒りを新たにする」と強調した。「怒りを国民全ての思いとして結集し、これをぶつけるべき相手は北朝鮮であり、
独裁者である金正恩朝鮮労働党委員長である」と主張したうえで「国民の怒りを突きつけ、被害者全員の奪還を実現させるのは、日本政府の責務である」と強く求めた。
朝日も「やさしい表情で親の情を貫徹する姿を通じて、北朝鮮問題の現実を知り、被害者に思いを寄せた人々は数知れない。
重く、つらい人道問題の象徴的な存在だった」と滋さんの死を悼んだ。
そして「その無念さに誰もが胸を痛めている。この悲劇を繰り返してはならない」と論考し、
「北朝鮮の非道さを非難するとともに、日本政府には問題の解決へ向けた有効な方策を急ぐよう強く求める」と訴えた。
北朝鮮の金正日総書記は平成14年の日朝首脳会談で拉致の事実を認めて謝罪し、5人の被害者の帰国が実現したが、めぐみさんら8人については死亡が伝えられた。
その後、北朝鮮が遺骨だとして提供した骨は、DNA鑑定で別人のものと判明した。
こうした対応について、毎日は「不誠実で、とうてい信用できるものではなかった」と非難した。
一方、拉致問題に関する安倍晋三政権の外交方針について「柔軟性を欠く対応も目立った」と難じたのは東京だ。
「この問題に精通しているはずの安倍晋三首相が、北朝鮮に圧力一辺倒の対応をしてきた」と批判した。
そのうえで「日本政府は拉致解決を国交正常化交渉の入り口に位置づけ、経済制裁を強化した。
金総書記に謝罪をさせた『成功体験』にこだわりすぎたのではないか」と疑問を示した。
日朝間には、日朝首脳会談での平壌宣言を踏まえ、6年前に結んだ「ストックホルム合意」がある。
この合意には拉致や遺骨問題などを含む包括調査や制裁解除などが盛り込まれた。
朝日は「当時、横田さん夫妻がモンゴルで孫娘と面会したことで機運が生まれ、この合意ができた」と指摘し、
「滋さんの遺志を引き継ぐためにも、安倍政権はこの合意にもとづく交渉を再開させるよう全力を注ぐべきだ」と求めた。
毎日も「厳しさを増す安全保障環境の下での拉致事件の解決は簡単ではない」と強調し、
「政府は、この間の経緯をいったん検証して戦略を立て直す必要がある。早期解決を図るための取り組みを強化すべきだ」と注文した。
これに対して産経は「北朝鮮は今年に入り、短距離弾道ミサイルなどの発射を繰り返して国際社会への挑戦を再開している」と批判した。
そのうえで「政府は自ら膠着(こうちゃく)を破る行動を起こすべきだ。拉致の解決なしに北朝鮮は未来を描けないと理解させる、交渉の原点に返るべきだ」と訴えた。
政府が認定する未帰国の拉致被害者の親で存命なのは、早紀江さんと有本恵子さんの父の明弘さんの2人だけになってしまった。一刻も早い事態の解決が望まれる。(井伊重之)
※以下略