2021年からスタートするバイデン政権。その財務長官に元FRB(連邦準備制度理事会)議長のジャネット・イエレン氏が指名される予定だ。アメリカの経済政策はどうなっていくのか? 日本経済にも影響を及ぼすことは必至だ。ベストセラー『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』と『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』で日本のMMT(現代貨幣理論)ブームの火付け役となった評論家・中野剛志が、アメリカと日本の経済の行方を予測する!
■次期財務長官イエレン氏の経済政策の考えとは?
※省略
イエレン氏の問題意識は、世界金融危機とその後の長期停滞によって、従来の経済学の欠陥が明らかになり、経済に対する見方を変えなければならなくなったのではないかというところにありました。
その論点の一つとしてイエレン氏が挙げたのは、需要と供給の関係でした。
世界金融危機の前まで、ほとんどの主流派経済学者が、長期的な経済成長は、主に供給によって決まると信じていました。そして、需要は、短期の経済変動を説明する要因ではあっても、供給に対して影響を及ぼすようなものではないと考えられてきました。
ところが、世界金融危機による需要の急減の後、ほとんどの先進国において、経済パフォーマンスは、世界金融危機以前の水準に戻りませんでした。これは、需要の減少が、経済の供給サイドにも長期的な悪影響を与えているということです。需要が急減して、大不況になれば、企業は設備投資や研究開発投資を控えるし、働けない労働力も増えるので、供給力も衰え、成長率が下がったのです。
つまり、長期的な経済成長には需要は関係ないという従来の主流派経済学の考え方が間違っていたということです。
そこで、イエレン氏は、積極的な財政金融政策を発動して、需要を拡大することを提唱します。
需要が十分にあるならば、企業は積極的な設備投資や研究開発投資を行うし、労働者も働けるようになるので、供給力は高まり、経済が成長します。
このように、需要が十分にある経済を、イエレン氏は「高圧経済(ハイプレッシャー・エコノミー)」と呼んでいます。「高圧経済」とは、「需要>供給」が続くインフレ気味の経済のことですね。
ここで重要なのは、需要が拡大すれば供給も拡大するというイエレン氏の指摘です。
MMT(現代貨幣理論)を批判する経済学者たちは、しばしば「財政支出を拡大したら、インフレが止まらなくなる」と言い張ってきました(BEST T!MES 2020年3月18日)。
確かに、従来の主流派経済学によれば、需要は供給に影響を与えず、長期的な経済成長は供給だけで決まります。したがって、需要を拡大しても、供給は増えないから、供給不足によってインフレになるだけで、経済は成長しないということになります。
※省略
さて、米国に話を戻すと、イエレン新財務長官は、まずは、コロナ禍という大変な危機への対処を迫られることになります。2020年7月17日、イエレン氏は、元FRB議長のベン・バーナンキ氏とともに、コロナ危機に対する経済政策について論じています(BROOKINGS 2020年7月17日)。
そこでイエレン氏は、やっぱり財政政策が非常に効果的だと主張し、財政支出の使途として、医療対策、失業対策、そして地方政府の財政支援を強調しています。長期的な財政の持続性も確保すべきかもしれないが、「今、最優先すべきは、市民をパンデミックから守り、強くて公平な景気回復を追求することだ」とイエレン氏は言っています。
念のために言っておくと、イエレン氏は、MMTを支持してはいません(Bloomberg 2019年3月26日)。しかし、低金利の環境下では、財政は十分に持続可能であると考えているようです(CFA institute 2020年2月18日) 。これは、ローレンス・サマーズ氏やオリヴィエ・ブランシャール氏など、積極財政を支持する経済学者と同じ論理です(BEST T!MES 2019年5月28日)。
日本経済は、異常なほどの超低金利が長年にわたり続いています。
したがって、イエレン氏などMMTを認めない経済学の大御所たちの論理に立ったとしても、日本は財政支出を拡大すべきだということになります。
さて、以上のような考えを持つイエレン氏を、麻生財務大臣は「きわめて常識的な人」と評しました。
あ、そう。だったら、日本も「高圧経済」を目指して大規模な財政出動を断行すると言えレン!
12/9(水) 7:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20201209-00757470-besttimes-bus_all
https://amd-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-amd/20201209-00757470-besttimes-000-1-view.jpg
■次期財務長官イエレン氏の経済政策の考えとは?
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イエレン氏の問題意識は、世界金融危機とその後の長期停滞によって、従来の経済学の欠陥が明らかになり、経済に対する見方を変えなければならなくなったのではないかというところにありました。
その論点の一つとしてイエレン氏が挙げたのは、需要と供給の関係でした。
世界金融危機の前まで、ほとんどの主流派経済学者が、長期的な経済成長は、主に供給によって決まると信じていました。そして、需要は、短期の経済変動を説明する要因ではあっても、供給に対して影響を及ぼすようなものではないと考えられてきました。
ところが、世界金融危機による需要の急減の後、ほとんどの先進国において、経済パフォーマンスは、世界金融危機以前の水準に戻りませんでした。これは、需要の減少が、経済の供給サイドにも長期的な悪影響を与えているということです。需要が急減して、大不況になれば、企業は設備投資や研究開発投資を控えるし、働けない労働力も増えるので、供給力も衰え、成長率が下がったのです。
つまり、長期的な経済成長には需要は関係ないという従来の主流派経済学の考え方が間違っていたということです。
そこで、イエレン氏は、積極的な財政金融政策を発動して、需要を拡大することを提唱します。
需要が十分にあるならば、企業は積極的な設備投資や研究開発投資を行うし、労働者も働けるようになるので、供給力は高まり、経済が成長します。
このように、需要が十分にある経済を、イエレン氏は「高圧経済(ハイプレッシャー・エコノミー)」と呼んでいます。「高圧経済」とは、「需要>供給」が続くインフレ気味の経済のことですね。
ここで重要なのは、需要が拡大すれば供給も拡大するというイエレン氏の指摘です。
MMT(現代貨幣理論)を批判する経済学者たちは、しばしば「財政支出を拡大したら、インフレが止まらなくなる」と言い張ってきました(BEST T!MES 2020年3月18日)。
確かに、従来の主流派経済学によれば、需要は供給に影響を与えず、長期的な経済成長は供給だけで決まります。したがって、需要を拡大しても、供給は増えないから、供給不足によってインフレになるだけで、経済は成長しないということになります。
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さて、米国に話を戻すと、イエレン新財務長官は、まずは、コロナ禍という大変な危機への対処を迫られることになります。2020年7月17日、イエレン氏は、元FRB議長のベン・バーナンキ氏とともに、コロナ危機に対する経済政策について論じています(BROOKINGS 2020年7月17日)。
そこでイエレン氏は、やっぱり財政政策が非常に効果的だと主張し、財政支出の使途として、医療対策、失業対策、そして地方政府の財政支援を強調しています。長期的な財政の持続性も確保すべきかもしれないが、「今、最優先すべきは、市民をパンデミックから守り、強くて公平な景気回復を追求することだ」とイエレン氏は言っています。
念のために言っておくと、イエレン氏は、MMTを支持してはいません(Bloomberg 2019年3月26日)。しかし、低金利の環境下では、財政は十分に持続可能であると考えているようです(CFA institute 2020年2月18日) 。これは、ローレンス・サマーズ氏やオリヴィエ・ブランシャール氏など、積極財政を支持する経済学者と同じ論理です(BEST T!MES 2019年5月28日)。
日本経済は、異常なほどの超低金利が長年にわたり続いています。
したがって、イエレン氏などMMTを認めない経済学の大御所たちの論理に立ったとしても、日本は財政支出を拡大すべきだということになります。
さて、以上のような考えを持つイエレン氏を、麻生財務大臣は「きわめて常識的な人」と評しました。
あ、そう。だったら、日本も「高圧経済」を目指して大規模な財政出動を断行すると言えレン!
12/9(水) 7:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20201209-00757470-besttimes-bus_all
https://amd-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-amd/20201209-00757470-besttimes-000-1-view.jpg