北海道余市町立の中学校が2022年10月の修学旅行で、本来は全ての生徒に配る必要がある新型コロナウイルスに関連する旅行支援のクーポンを就学支援認定世帯の生徒に配っていなかった問題を巡り、校長が旅行会社との事前の打ち合わせで「旅行代金を払っていないのだから、クーポンを配布する必要はない」と話していたことが判明した。毎日新聞が町に情報公開請求し、学校と旅行会社とのやり取りを入手した。【金将来】
就学支援制度は、経済的な理由で学用品代や給食費などの負担が困難な世帯の児童生徒を国や自治体が援助するもの。余市町の場合、修学旅行費も援助の対象となっている。
毎日新聞は町に対して、問題の経緯に関する行政文書の開示を求めた。町は「事故報告書」の一部を開示。個人名はすべて、町教育委員会が学校関係者に聞き取りをした際のやり取りなどは部分的に黒塗りにされていた。
事故報告書によると、修学旅行の打ち合わせは22年10月14日に校長室であった。学校側は校長、担任など計4人、旅行会社側は担当者1人が出席した。
政府の全国旅行支援は、新型コロナウイルスで鈍る旅行を活性化させるため、観光客の旅行代金を割引し、買い物や飲食に使えるクーポンを配布する制度だ。修学旅行は中学3年の31人が参加。制度の適用期間中、2泊3日で岩手県を訪問したところ、県発行の計6000円のクーポンが特定の生徒たちにだけ配られなかった。
10月にあった打ち合わせで、旅行会社側は「(受け取れない生徒の心痛を察すると)全員に配布しない選択肢もある」と学校側に提案した。一方、校長は「旅行代金を払っていないのだから、クーポンを配布する必要はない」と主張。協議を重ね、10月18日に就学支援対象者を除いたクーポンの配布が決まった。しかし、毎日新聞が発行元の岩手県に確認したところ、就学支援対象者がクーポンを受け取れないという規定はないという。
クーポンの配布がないことは、修学旅行中に生徒に伝えられた。修学旅行に同行した校長は、「意味が分からない」と説明を求める生徒たちに「卑下することはない。それぞれに家庭の事情があり、恥ずかしいと思う必要はない」と話した。クーポンが配布されなかったのは31人中7人。自身が就学支援対象と知らない生徒もいたという。
このほか、校長がクーポンの件を生徒に伝えた後の修学旅行最終日に、教員がクーポンをもらっていない生徒がいる前で「クーポン、使い切れよ」などと配慮に欠ける声かけを行っていたことも明らかになった。
問題発覚後、保護者から学校などに「『税金で援助されている人は、クーポンをもらえない』と子どもに言ったのは本当か」との意見が寄せられている。修学旅行に行ったある生徒の保護者は「子どもたちは無責任な大人たちの犠牲になり、傷つけられた。悲しくて情けない」と憤った。
道教委は「修学旅行は学校生活の中でも特に思い出に残る行事。二度とこのようなことがおきないように再発防止に努めたい」とコメント。旅行会社は対応の誤りを認め、保護者に謝罪した。
毎日新聞 2023/3/15 06:30(最終更新 3/15 06:30) 1264文字
https://mainichi.jp/articles/20230314/k00/00m/040/250000c
就学支援制度は、経済的な理由で学用品代や給食費などの負担が困難な世帯の児童生徒を国や自治体が援助するもの。余市町の場合、修学旅行費も援助の対象となっている。
毎日新聞は町に対して、問題の経緯に関する行政文書の開示を求めた。町は「事故報告書」の一部を開示。個人名はすべて、町教育委員会が学校関係者に聞き取りをした際のやり取りなどは部分的に黒塗りにされていた。
事故報告書によると、修学旅行の打ち合わせは22年10月14日に校長室であった。学校側は校長、担任など計4人、旅行会社側は担当者1人が出席した。
政府の全国旅行支援は、新型コロナウイルスで鈍る旅行を活性化させるため、観光客の旅行代金を割引し、買い物や飲食に使えるクーポンを配布する制度だ。修学旅行は中学3年の31人が参加。制度の適用期間中、2泊3日で岩手県を訪問したところ、県発行の計6000円のクーポンが特定の生徒たちにだけ配られなかった。
10月にあった打ち合わせで、旅行会社側は「(受け取れない生徒の心痛を察すると)全員に配布しない選択肢もある」と学校側に提案した。一方、校長は「旅行代金を払っていないのだから、クーポンを配布する必要はない」と主張。協議を重ね、10月18日に就学支援対象者を除いたクーポンの配布が決まった。しかし、毎日新聞が発行元の岩手県に確認したところ、就学支援対象者がクーポンを受け取れないという規定はないという。
クーポンの配布がないことは、修学旅行中に生徒に伝えられた。修学旅行に同行した校長は、「意味が分からない」と説明を求める生徒たちに「卑下することはない。それぞれに家庭の事情があり、恥ずかしいと思う必要はない」と話した。クーポンが配布されなかったのは31人中7人。自身が就学支援対象と知らない生徒もいたという。
このほか、校長がクーポンの件を生徒に伝えた後の修学旅行最終日に、教員がクーポンをもらっていない生徒がいる前で「クーポン、使い切れよ」などと配慮に欠ける声かけを行っていたことも明らかになった。
問題発覚後、保護者から学校などに「『税金で援助されている人は、クーポンをもらえない』と子どもに言ったのは本当か」との意見が寄せられている。修学旅行に行ったある生徒の保護者は「子どもたちは無責任な大人たちの犠牲になり、傷つけられた。悲しくて情けない」と憤った。
道教委は「修学旅行は学校生活の中でも特に思い出に残る行事。二度とこのようなことがおきないように再発防止に努めたい」とコメント。旅行会社は対応の誤りを認め、保護者に謝罪した。
毎日新聞 2023/3/15 06:30(最終更新 3/15 06:30) 1264文字
https://mainichi.jp/articles/20230314/k00/00m/040/250000c