文系の価値はたった5円

一つの鍵は、理系重視だ。台湾は産学官民 一体となり、理系人材の教育に注力してきた。
さらに、英語に堪能な台湾の若者は、欧米の理工科系の大学や大学院に留学し、その能力を生かして起業するケースも少なくない。だから、シリコンバレーで起業した経営者は、アメリカ人以外では台湾人がインド人に次いで2番目に多く、母国の人口比でもイスラエルに次いで2番目に多いのだ。そうした留学生の中から、ヤフーの共同創業者ジェリー・ヤン、半導体メーカー・エヌビディアの共同創業者ジェン・スン・ファンらが登場している。
TSMCの創業者モリス・チャンも、米MIT(マサチューセッツ工科大学)を卒業して米国企業でスキルを磨いた経歴を持ち、1987年にTSMCを設立した。
一方、日本は相変わらず高校で「文系」と「理系」に分けており、大学生は、7対3くらいの割合で文系が理系より多くなっている。だが、21世紀に「文系卒」の“生息領域”はほとんどない。
文系の学部・学科で学ぶ知識の多くはスマートフォンやパソコンですぐに検索できるし、USBメモリーなどに入れてしまえば、その価値は高く見積もっても、せいぜい5円程度だからである。
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。早稲田大学理工学部大学院卒。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『大前研一 世界の潮流2021〜22』(プレジデント社)など著書多数。