■デマやフェイクニュースに対処するための3つの助言

 2016年を象徴する言葉の威光はまだまだ衰えず、今まさに「ポスト真実(post truth)」の時代を迎えている。真贋を見抜く目を個人レベルで持つことが要求される時代あって、何を指標にすればよいのか? 
こうした社会の要望に応えるべく、米・ワシントン大学ではこの春から「Calling Bulls**t(嘘つきを連れ出せ)」という授業が開講されている。

 講義の目的は「社会科学、自然科学のどちらにおいてもエビデンスを構成するデータとモデル理論をどうすれば批判的に考えられるのか」ということについて理解を深める内容であるということだ。

 カール・バーグストローム教授とジェビン・ウェスト助教授によって行なわれた講義は、フェイクニュースなどの社会的時事問題に触れるほかにも、
虚偽の主張をいかにして論破するかの例を見せて共に考えていくことに主眼が置かれたものであるという。

 春からの講義はいったん終講したということもあり、先ごろこの講義に関するパネルディスカッションが行なわれ、その中でウェスト助教授はデマ情報やフェイクニュースに対処するための3つの助言を挙げている。

1. もっと考えよ、あまり群れるな
「私は学生にもっと考えさせたいし、あまり群れてほしくないと訴えています。情報のすべてに目を通す時間がないというのに、多くは他の人々と行動や意見を共にしすぎています」(ジェビン・ウェスト助教授)

2. 別の角度から眺める
「私たちは、フェイクニュースに多額のお金が関わっていることを知っています」とウェスト氏は語る。そして一部の大企業はブランドイメージが損なわれるためにフェイクニュースメディアには関わりたくないと考えているということだ。
つまり一部の大企業のフェイクニュースへの嫌悪感によって金が動く可能性もあることになる。こうしたことがフェイクニュースにまつわる認識において別の視点を得る手助けになる。

3. シンプルな3つの確認
 どの分野であれ有効な3つの確認事項があるという。それは、誰がその情報を私に告げているのか? どうやって彼らはその情報を知ったのか? その情報の何が彼らのためになるのか? ということだ。
この3点を明らかにしてみることで、真偽の見極めがしやすくなるということだ。

 情報の洪水によって真実が見えにくくなっている中にあって、何が本当であるのか、その判断が個人に委ねられた時代に突入したとも言える。確かな情報に触れ、確かな目を持つことがもはや死活問題になったと言えるのかもしれない。

文/仲田しんじ