シリア内戦をはるかに超えたアメリカとロシアの対立
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アメリカのティラーソン国務長官が、アメリカ国務長官として初めてロシア・モスクワを訪問しました。

こうした中、アメリカとロシアの関係は、冷戦以来最悪の事態に落ち込んでいます。

アメリカによるシリアへのミサイル攻撃から数日後、ティラーソン長官はモスクワにてロシアとシリアの関係に亀裂を起こそうとしています。

ティラーソン長官は、モスクワに出発する前に脅迫的な内容の表明を行い、「ロシアは、シリアのアサド大統領とアメリカのうち、どちらかを選ぶべきだ」と語りました。

同時に、ロシアのプーチン大統領も、「これまでに把握している報道によれば、アメリカはシリア南部への化学兵器による攻撃を計画している」と述べました。この発言は、
シリア危機をめぐりアメリカとロシアの間に非常に深い溝が存在することを物語っています。

もっとも、ティラーソン長官がモスクワに向かったのは、イタリアでのG7先進7カ国会合で、すなわちロシアとシリアに対する経済制裁の強化に向けた、G7の外相らの
支持を取り付けらずに終わった後のことでした。

どうやら、G7におけるアメリカの同盟国の支持を受けた、シリアに対するアメリカのミサイル攻撃から時間が経過するとともに、ロシアとアメリカの間の亀裂の拡大により、
世界各地でシリア問題をめぐるアメリカとロシアの核戦争の勃発の危険への懸念が生じているようです。このこともあり、ティラーソン長官はロシアに向けてイタリアを出発する直前になって、
アメリカの政府関係者による辛らつな口調とは逆に、表面的に穏やかな口調でロシアに対し、シリア政府への政治的、軍事的な支援をやめればロシアに歩み寄るとしました。こうした中、
先週金曜にモスクワで開催されたロシア、イラン、シリアの外相会合は、ロシアの政府関係者がアメリカのアメとムチの政策の圧力を受けながらも、シリアにおける自らの政策を転換する
意向のないことを示しています。

アメリカとロシアの対立が、シリアの内戦や政治的な将来よりもはるかに深刻なものであることはいうまでもありません。トランプ政権時代のアメリカは、東側陣営が崩壊し、国際体制に
対する自らのヘゲモニー的な立場が強化された後、一極時代への回帰を目指しています。

トランプ大統領は、「アメリカを再び繁栄させよう」とのスローガンを掲げて大統領に当選し、ナンバーワンのアメリカというスローガンにより職務を開始しました。こうした中、
ロシアのプーチン大統領は数年前から、権力の復活というプロセスを開始しています。ロシアのナショナリストの見解では、もし近い将来ロシアが中央アジアやコーカサス地域、
東ヨーロッパ、西アジア、北アフリカ、東アジアで力を失えば、国際体制において、一流国から二流国、あるいは三流国に成り下がるだろうと見られています。この段階を乗り切る
通過ポイントは、現在シリアにあります。このため、ロシアが沈黙していた、あるいは反対的な行動をとらなかった旧ユーゴスラビアやアフガニスタン、イラク、リビアでのアメリカの
軍事行動とは逆に、シリアにおいてロシアはあらゆる手段を尽くして戦場に介入し、シリアに対するアラブ・西側連合を結成する計画を壊そうとしているのです。

一部の証拠からは、シリアが現在のロシアにとって第2時世界対戦時代のソ連のスターリン政策をとっており、これを放棄することはロシアの長期的な利益が危険にさらされることが
わかります。このため、ロシアのメドベージュフ首相はシリアに対するアメリカのミサイル攻撃の数時間後、「ロシアとアメリカは戦争の一歩手前にある」、と語りました。数日前にも、
この距離は広がらなかったばかりか、アメリカはシリア政府軍によるとされる化学兵器の使用にロシアが絡んでいたとまで主張しています。

こうした状況に基づき、アメリカ国務長官としてロシアに表面的な友好の手を差し伸べたモスクワでの、ティラーソン長官の最も重要な外交協議が功を奏するとは考えにくいと思われます。