虐待では?ネコのツメ除去手術 病気リスクや問題行動も…米研究
ハザードラボ:2017年05月24日 18時40分
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ネコ好きには耐えられない!米国で一般的な抜爪手術がネコの健康を損なっていた(イメージ写真/AC)

 カーテンによじ登ったり、家具やソファを引っかいたり、ネコをめぐるトラブルはさまざまあるが、多くの飼い主はダンボール製の爪とぎや、専用器具によるツメ切りで、被害を最小限にとどめる努力をしている。
一方、ツメが永久に生えなくする抜爪(ばっそう)手術が普及している米国で、大学の獣医学研究チームが、手術による長期的な健康リスクや問題行動の悪化を裏付ける調査結果を発表した。

 米国で「デクロー(Declaw)」と呼ばれる抜爪手術は、ツメが生える前足の第一関節から先をすべて切断する手術で、ネコにとってはもちろん激痛を伴うもの。
このため、カリフォルニア州など米国の一部地域やヨーロッパなどでは「動物虐待」だとして禁止されている。
(日本では一般的ではないため実態は把握されていないが、一部の動物病院では実施するところもある)

 テキサス州の猫専門メディカルセンターのニコール・マルテル・モラン医師らのグループは、
抜爪手術を受けたネコ137匹(うち33匹は4足全て抜爪済み)と、未手術ネコ137匹の計274匹を対象に健康調査や問題行動の有無を調査した。

 レントゲン検査を行った結果、抜爪されたネコは、手術を受けていないネコに比べて背中を痛めている割合が、オッズ比で2.66倍多く、決められたトイレ以外の場所でオシッコをする率も7倍以上高かった。
このほか、飼い主に噛み付いたり、攻撃的になるなどの問題行動もひんぱんに報告されたという。

 米国獣医学会では、抜爪手術は足指の先端部分の第3関節を除去するようガイドラインを設けている。
しかし、今回の調査では37%のネコで不適切な手術が行われていたという。

 これまでの調査で、米国内では20%以上のネコが手術を受けていると推定されており、動物愛護団体や環境団体からは反対の声も上がっていた。
しかし、人間と比べてネコの寿命は短いため、長期的な影響を調べる医学的な研究はほとんどなかったという。

 研究グループは「排泄の失敗や問題行動が多い猫ほど、保健所や保護施設に捨てられるリスクが多い。
また、手指が痛むため、噛むことで飼い主に訴えたり、自分の身を守ったりするしかなく、噛まれた人は、パスツレラ症などのリスクがある」として、抜爪手術そのものへの見直しを訴えている。

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抜爪手術を受けたネコの手足のレントゲン写真。aは第3関節がすべて無くなったケース。b〜dは、関節の一部が残っている(Nicole Martell-Moran)

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米国では、一部の獣医師サイトなどで、抜爪手術をしてくれる獣医師を紹介している(Declaw.comより)