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[サンフランシスコ 29日 ロイター] - 買ったばかりの新車の計器パネルには、小粋なデジタル表示のメーターやフルカラーの画面が並んでいることだろう。だが、そのダッシュボードの裏を見れば、米自動車部品メーカーのビステオン(VC.N)が直面する課題が露わになる。それは「混乱」だ。

運転席には、カーナビゲーションや、音楽・映像等のエンターテインメント装置などのデジタル機能が、かつてないほど詰め込まれている。これらを統括するための電子機器が、さまざまなメーカーによる部品の寄せ集めによって、手に負えない混乱を生じている。

そこで今、この混乱収拾に向けた競争が始まっている。

自動運転時代の先導役を務める完全デジタル化されたダッシュボード、いわゆる「バーチャル・コックピット」に向けて自動車業界が加速するなかで、ビステオンを含めた多くの部品メーカーはダッシュボード内部の簡素化や低コスト化、軽量化を目指している。

狙うのは市場規模が約370億ドル(約4.2兆円)と推定される運転席用電子機器市場だ。2022年までに市場規模は620億ドルに倍増すると調査会社IHSマーケットは試算している。

会計監査大手のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、自動車の価格に占める電子機器部分の比率は、2015年には13%だったが、今後2年間で最大20%に上昇すると予想。

ただし、自動車メーカー各社が、供給先を能力の高い少数企業に絞り込もうとするなかで、こうした車載電子機器部品のサプライヤー数は今後縮小していく可能性が高い、とIHSマーケットの自動車主任アナリスト、マーク・ボヤジス氏は指摘する。

「もはや自動車メーカーは、サプライヤー10社から調達した10種類のシステムを組み込むなどという複雑な作業をやりたがらない」とボヤジス氏は語る。

運転席関連部品に関して、各自動車メーカーが直接取引するサプライヤーは、現在は1車種につき6─10社だが、いずれは2─3社へと減少するだろうと同氏は予想する。

<破たんから再生>

ビステオンによるソリューションの1つが、「スマートコア」と称するコンピューターモジュールだ。この運転席用ドメインコントローラーは、車両の計器パネル、情報娯楽システムなどの機能を、すべて単一の半導体上でコントロールする。

デトロイトに本拠を置くビステオンは今年に入り、金額は非公開だが、大口契約を2件獲得した。4月に発表された、中国第2位の自動車メーカー東風汽車との契約と、ロイターの調べによれば、もう1件はメルセデスベンツ(DAIGn.DE)との契約と見られている。ビステオンは、もう1社の欧州自動車メーカーが、2018年に同社システムの採用を計画しているという。社名は明らかにしなかった。

ビステオンは運転席用電子機器に全力を投じており、それ以外の車内環境や内装事業を昨年手放している。この賭けは今のところ奏功している。中国における成長に支えられて、ビステオンは今年第1・四半期には、15億ドル相当の新規契約を獲得した。ビステオンの株価は昨年50%以上も上昇している。

10年前にフォード(F.N)からのスピンオフとして誕生したビステオンにとって、これは大きな転機だ。ビステオンは2009年に米連邦破産法11条の適用申請を行っており、その1年後に再建された。

「迅速に変化し、適応する必要がある。そうでなければ、この市場にはついていけない」と語るのは、ビステオンでグローバル・マーケティング部門を率いるティム・ヤードン氏。「リードを維持するために、自ら生まれ変わるということだ」
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Alexandria Sage

2017年 7月 6日 12:30 PM JST