九州北部を見舞った豪雨災害により、福岡県と大分県の観光地に影響が広がっている。原鶴など被災地に近い温泉地だけでなく、由布院や別府でも予約のキャンセルが出ている。
夏の観光シーズンが迫る中、昨年の熊本地震を乗り越えた観光地から再び懸念の声が上がる。

「怖いのは風評被害だ」。原鶴温泉旅館協同組合(福岡県朝倉市)の井上善博代表理事は不安を募らせる。福岡都市圏に近い温泉郷として親しまれ「原鶴は安全です」と宣言したいが、客足が戻る気配はない。
温泉郷は筑後川沿いにあり、鵜(う)飼いは中断されたが、被害はほとんどなかった。福岡都市圏と原鶴温泉を結ぶ国道386号は寸断されているが、筑後川対岸の福岡県うきは市を通るルートがあり、自家用車で安全にアクセスできる。

それでも一般宿泊客のキャンセルは温泉宿12軒で計5610件に上る。被災者への無料開放の利用者は5千人を超えるが、14日で終える予定だ。
「支え続けたい。でも私たちも苦しい」。「やぐるま荘」の師岡哲也社長は胸の内を明かす。

影響は、被災地周辺にとどまらない。運休が続く「ゆふいんの森」は8月5日までに1万4千席の予約がキャンセルされた。
由布院温泉(大分県由布市)の「由布院玉の湯」の担当者は「宿泊のキャンセルが出ている。熊本地震から1年かかって回復したのに、勘弁してほしい」と嘆く。

大分県別府市の「杉乃井ホテル」は、6日に約100室、7日に約30室がキャンセルされた。今週に入り、夏休みの予約申し込みが鈍っている。
ダイレクトマーケティング部の東健治部長は「日田の被害をニュースで見た遠方のお客さまから『大丈夫か』と電話がかかっている」。

JTB九州(福岡市)によると、7月下旬までに九州7県で個人旅行を計画していた約450人から5?9日にキャンセルの申し出があった。
「各地の温泉施設は営業しているし、安心してもらえるよう伝えたい」(広報担当)と風評被害の払拭(ふっしょく)に力を入れる。

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JR九州は11日、観光列車「ゆふいんの森」(博多?由布院)を代替ルートで15日から再開すると発表した。小倉駅と大分駅を経由して1日2往復する。
従来は片道2時間10分程度だが、遠回りのため4時間半から6時間弱かかる。福岡市内?由布院の2枚きっぷは従来通り8020円。
福永嘉之鉄道事業本部副本部長は会見で「海外客にも人気がある列車。時間はかかるが、代替ルートを利用してほしい」と呼び掛けた。

配信 2017年07月12日 03時00分 更新
西日本新聞経済
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