NHKが2019年からの実施を目指すテレビ番組のインターネット常時同時配信(ネット同時配信)を巡り、ネットでの利用者にも受信料を課す考えを公に表明した。
ネット同時配信にはもともと民放業界から異論が相次いでいたが、ここにきて「ネット利用者に受信料の網を拡大したい」というNHKの“本音”が露呈したことに加え、「ネット空間における公共性とは何か」という新たな論点も浮上。
事は放送業界だけの問題ではなくなりつつある。迷走するNHKのネット同時配信問題について解説する。
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ネット配信利用者にも受信料……NHKが開けた「パンドラの箱」?

◆唐突に飛び出した「本来業務」発言

 NHKによるネット同時配信については、総務省の二つの有識者会議――「放送を巡る諸課題に関する検討会」(諸課題検討会)と「放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会」で議論が進められている。

 昨年暮れに総務省がNHKの意を受けて放送法改正に乗り出す姿勢を示したことに対し、民放業界が「議論が進んでいない。拙速すぎる」と反発したため、現在は二つの有識者会議を舞台に総務省、NHK、民放が駆け引きを続けている状態だ(この経緯は、先に執筆した「NHKと民放、ネット同時配信めぐりバトル」で詳述)。

 ところが、ここにきて新たな論点が浮かび上がった。NHKがネット同時配信を行う際に、ネットでの利用者に受信料を課す考えを打ち出したのだ。

 NHKの坂本忠宣専務理事は7月4日に開かれた諸課題検討会の席上、次のように発言した。

 「同時配信の位置づけでいうと、(有識者会議の『受信料制度等検討委員会』から)受信料型を目指すことに一定の合理性があるという考えをいただいているので、将来的には本来業務ということを考えている」

 この発言の直接のきっかけとなったのは、NHKが設置した有識者会議「受信料制度等検討委員会」が6月末に出した答申案である。答申案は、

 ▼すでに放送受信契約を結んでいる世帯に対しては、追加負担を求めないことが適当。

 ▼それ以外の世帯費用負担の性質としては、「NHKの事業の維持運営のための特殊な負担金である受信料として費用負担を求める考え方(受信料型)」があり、「放送の常時同時配信は、NHKが放送の世界で果たしている公共性を、インターネットを通じて発揮するためのサービス」と考えられるので、「受信料型」を目指すことに一定の合理性がある。

 ▼しかし、受信料型は制度検討に時間がかかると予想され、当面の暫定措置の検討が必要。具体的には「有料対価型」負担のほか、一定期間は費用負担を求めない運用も考えられる。

 ▼「受信料型」の場合は、PC等を所持・設置しているだけでは費用負担は求めない。常時同時配信を利用するための何らかのアクション、もしくは手続きをとった場合に費用負担者とする「ゆるやかな認証」とすることが適当。

 といった内容で構成されている。

 個々の問題点は後で詳しく指摘するが、「受信料型を目指すことに一定の合理性がある」というお墨付きを得て、いよいよネットでの利用者に受信料を課そうというNHKの真の狙いが表に出てきたというわけだ。

◆「大変な違和感」「議論ずれている」民放各社が反発 ※内容省略

 一方、放送業界への影響はどうか。こちらについては少し説明を要する。

◆総務省も「青天の霹靂」 ※内容省略

今回のNHKの対応は、総務省にとってもまったく想定外だったようだ。

◆高市総務相の正論 ※内容省略

 総務省を預かる高市早苗総務相は、今回のNHKの対応に非常に不満を抱いているとされる。
 「常時同時配信だけ先に進めようとするNHKのことを快く思っていない」(総務相周辺)という。

◆自ら示した「受信料制度の問題点」 ※内容省略

 二つ目の「パンドラの箱」は、現行の受信料制度が内包する問題を顕在化させる引き金となるのではないか、という点だ。

◆カーナビを持つだけで受信料契約 ※内容省略

 ここまで答申案を詳しく紹介してきたが、見えてきたものは何か。それはつまるところ、これら答申案の表現こそがまさに、現行の受信料制度の問題点を浮き彫りにしているという事実だ。

読売新聞 7/15(土) 7:03配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170715-00010000-yomonline-life&;p=1