2017.8.16 20:57
 不動産市場で、老朽化した分譲マンションの建て替え事業を強化する動きが相次いでいる。新日鉄興和不動産(東京都港区)は「マンション再生総研」という新組織を発足、建て替えに関する東京大学との共同研究に乗り出した。旭化成不動産レジデンス(同新宿区)は9月から都内で、野村不動産も千葉県内で、それぞれ建て替え事業を進める。

 国内では築40年以上の分譲マンションが既に約63万戸(平成27年末時点)に上り、今後も“建て替え適齢期”の物件が増えることから各社は事業ノウハウを磨き、需要を取り込む狙いだ。

 分譲マンションの建て替えには区分所有者の5分の4以上の賛成が必要だが、費用負担など経済的な理由や、心理面など住民個別の事情などで合意が得られず、老朽化しても建て替えが進んでいない状況がある。27年末時点で、建て替えを完了している物件は3%に満たないとのデータもあり、潜在需要は大きい。

 新日鉄興和不動産は東大の「高齢社会総合研究機構」と連携し「超高齢社会に対応したマンション建替問題研究会」を設立。マンション所有者の反対理由などを分析し、住民の高齢化が進むほど合意形成が難しいとされる建て替え問題の解決の道を探る。研究成果を情報発信するなどして、建て替えの促進につながるようにする考えだ。

 同社は既に計18カ所で建て替えに携わっている。今後、年間3、4件ペースで建て替えプロジェクトを増やす計画を進めており、今回の研究成果を事業推進に反映させていく。

 一方、旭化成はこれまで、単棟型のマンションと団地型を合わせ28カ所で建て替え事業を展開。9月からは民間分譲マンション第1号の「四谷コーポラス」(東京都新宿区)の建て替え工事に着手する。

 四谷コーポラスは築61年を迎える。敷地規模が限られた小規模マンションで、建て替えても部屋はそれほど広がらず居住者の負担額も小さくないが、立地条件の良さから区分所有者の9割が再建後のマンションを再取得するという。

 野村不動産が手掛けるのは千葉県内で最大規模となる「若潮ハイツマンション建て替え事業」(千葉市美浜区)だ。コスモスイニシア、長谷工コーポレーションと共同で13棟500戸の団地を、9棟1009戸(このうち分譲は約860戸)へと大型化する。

 各社とも、さまざまな形態の建て替えに携わることでノウハウの蓄積を加速する方針だが、市場活性化には「高齢者が住みやすいマンション」の在り方などの提案力が一段と問われることになりそうだ。(伊藤俊祐)

http://www.sankei.com/smp/economy/news/170816/ecn1708160028-s1.html
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