住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるもの。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか? 
まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は? 
今回は、SUUMOが行った「住みたい街ランキング 2017」で26位にランクインした「下北沢」(東京都世田谷区)について、ライターの金子則男氏が解説する。

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いずれも人気路線の井の頭線と小田急線が交差する、通称「シモキタ」こと下北沢。現在40代の私たちの若い頃は絶大な人気を誇った下北沢ですが、BEST10どころかBEST20からも漏れるとは驚きです。
SUUMOの調査は、関東圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県)在住の20〜49歳の男女を対象に、
「住みたい沿線を選んだ後に、住みたい駅を選んでもらう」という方式でアンケートを取ったもの。
人気急落の原因はどこにあるのでしょうか。

下北沢の最大の魅力といえば、街中に漂う文化祭のような雰囲気でしょう。
街には、本多劇場やザ・スズナリほか、大小の劇場があり、演劇を志す少年少女にとって下北沢は聖地。
有名俳優や女優が、居酒屋で飲んでいたり、中華料理屋で定食を食べている姿に遭遇することも珍しくありません。
一方では数多くのライブハウスがあり、楽器を担いでいる若者がそこらじゅうにいます。
さらに古着屋、中古レコード屋、古本屋なども多く、サブカル好きの若者は退屈しません。

交通の便利さも申し分ありません。渋谷まで京王井の頭線の急行で1駅、新宿まで小田急線で10分程度、急行で1駅の代々木上原で、
向かいのホームにやって来る千代田線に乗り換えれば、東京の最都心部へもアクセスできます。
シモキタ住民と親和性が高そうな吉祥寺までも井の頭線で20分程度です。
道路状況は複雑で、道も狭いうえ一方通行も多く、運転手泣かせなので、基本的に歩き&電車移動するのが賢い選択でしょう。

ホーム地下化は吉だったのか、凶だったのか

井の頭線も小田急線も沿線には大学が多く、若者が下北沢に集うのは頷けますが、ここ数年、同駅の乗降客数が大幅に減少しています。
2014年度の小田急線の乗降客数は、前年比-5.2%と、一挙に減少。
その原因は、2013年3月に行われたホーム地下化にあると見るべきでしょう。
これにより小田急線は地下深く潜り、乗り降りや乗り換えの利便性は低下しました。

ホーム地下化が避けられなかったことは事実です。かつての地上ホームは非常に狭く、ホームには常に人が溢れていて危険な状態で、電車の警告音は鳴りっぱなし。
開かずの踏切問題も深刻でした。
ラッシュ時に電車がさばききれないため、複々線化は沿線住民の悲願。いつかはやらなければならなかったことなのは間違いありません。

しかし結果的に人々が、下北沢をスルーするようになったのかもしれません。
下北沢で降りていた人は、ホームから見える下北沢の風景や街を歩く若者を見て、
「ちょっと降りて行こうかな」「メシでも食べようかな」と思うこともあったのです。

渋谷と新宿へのアクセスの良さから、これ以上「住みたい街」としての人気が落ちることはないと思いますが、
下北沢には再開発計画もあり、最終的には都道が通り、駅前広場が完成する予定です。
再開発計画が進んで没個性化が進んだシモキタに、これまでと同じ魅力を感じることはないかもしれません。
シモキタがフツーの街になってしまうのはさびしい限りです。

「ワンルーム・1K・1DK」の家賃相場は8.50万円(ライフルホームズ調べ)と、なかなかの額です。
街の雰囲気が今後大きく変わる可能性が高いので、“シモキタ的な雰囲気”が好きな人は、住むなら今のうちではないでしょうか。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171021-00000001-moneypost-bus_all
10/21(土) 12:30配信