ベトナム人がフェイスブック(FB)を通じて大麻売買をしていた事件で、売買の場となっていたFBのグループ(コミュニティー)の参加者は約5万人に上ることが愛知県警への取材で分かった。ここでは犯罪に絡む銀行口座の売買も行われていたとされる。犯罪に関わった参加者は一部とみられるが、県警は広く公開されたFB上で、違法取引が横行していたとみて実態解明を進めている。

 県警は21日、このFBグループの管理者とみられるベトナム人の派遣社員、グエン・タイン・ルアン容疑者(26)を入管難民法違反(資格外活動)容疑で逮捕した。このほか違法取引に関与したなどとして8月以降、ベトナム人12人を逮捕した。

 グエン容疑者の逮捕容疑は今月13〜15日、就労資格がないのに愛知県知立市の工場で働いたとしている。「間違いない」と容疑を認めているという。

 FBのグループは共通の趣味・関心について交流できる場。県警によると、問題のFBグループは「Nagoya−Giao Vat」と名付けられ、2014年3月に開設された。主にベトナム語でやり取りされ、現在、ベトナム人を中心に約5万人が参加している。一般に公開されており、参加者は情報の書き込みや写真の投稿が自由にできる。

 県警は昨年10月、インターネットバンキングを悪用した別の不正送金事件で、犯行グループに口座を販売したとしてベトナム人の男を犯罪収益移転防止法違反容疑で逮捕した。男が「FBで口座売買の広告を見た」と供述し、県警は捜査で今回のFBグループを特定して投稿内容から口座や大麻の売買がされている状況を把握した。

 今年8月、県警はこのFBグループを介した大麻売買に関与したとしてベトナム人の男女9人を大麻取締法違反容疑で逮捕した。FBグループを通じて全国の約50人が大麻を購入したとみられる。その後、口座売買に関わったなどとしてベトナム人3人を逮捕した。

 県警は今後、グエン容疑者から管理の状況について詳しく聴くほか、このFBグループの閉鎖手続きを進める方針。【斎川瞳】

 ■不正送金先にベトナム人名義の口座が急増

 インターネットバンキングの不正送金先にベトナム人名義の口座が使われるケースが急増している。フェイスブック(FB)などを通じて売買された口座が犯行グループに渡っているとみられる。

 法務省によると、在留外国人のうちベトナム人は目立って増加しており、昨年末時点で前年比36.1%増の19万9990人で過去最高となり、10年前の3万1527人から約6.3倍に増えた。今年6月末では23万人余。

 警察庁によると、不正送金先口座の名義人国籍は中国が大半を占め、日本が続いていたが、昨年以降はベトナムの割合が増加している。今年上半期は(1)ベトナム191人(51.1%)(2)中国87人(23.3%)(3)日本42人(11.2%)で、ベトナムが中国を逆転して過半数を占めた。

 中国人名義の口座売買は中国語の会員制交流サイト「QQ」で頻繁に行われていた。全国の警察がQQの監視を強め摘発を強化したことから、中国人名義の口座売買は減少した一方、FBを利用したベトナム人の口座売買が急増したとされる。

 愛知県警によると、ベトナム人の留学生や技能実習生が小遣い稼ぎで安易に販売しているといい、帰国直前に売るケースが目立つ。違法性を認識していないケースも多いため、県警は昨春、口座売買の問題点を伝えるベトナム語の漫画を作成し、実習生受け入れ企業や日本語学校に配布するなどして注意を促している。【斎川瞳】

配信2017年11月21日 22時51分(最終更新 11月21日 23時23分)
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20171122/k00/00m/040/144000c