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12月11日 20時12分ノーベル賞

日本時間の11日未明、スウェーデンの首都ストックホルムでことしのノーベル賞の授賞式が行われましたが、重力波を世界で初めて観測したチームのリーダーとして物理学賞を受賞した研究者に対し、極めて珍しい形での受賞だと注目が集まっています。3年続いた日本人の受賞が途切れる中、専門家は「大規模化する現代の科学に求められる人材に光を当てるものだ」と話しています。

ことしのノーベル物理学賞を受賞したのは、世界で初めて時間と空間のゆがみが宇宙を波のように伝わる重力波の観測に成功したアメリカの研究チーム「LIGO」のメンバー3人です。

このうち、観測方法を考案したレイナー・ワイスさんと理論的な予測を行ったキップ・ソーンさんはいずれも重力波の専門家です。しかし、もう1人のバリー・バリッシュさんは重力波の専門家ではなく、2代目の所長としてLIGOを世界中の研究者が参加する大型プロジェクトに変革したことを評価されての受賞となりました。

こうした形での受賞について、科学政策が専門でノーベル賞の歴史に詳しい科学技術・学術政策研究所の赤池伸一センター長は「これまでは、受賞対象となる論文を中心になって執筆した研究者が受賞していて、プロジェクトを率いたという功績での受賞は極めて珍しい」と話しています。

そのうえで、「近年、特に物理学の実験は大規模化しマネージメントの役割はますます大きくなっていて、バリッシュ氏の受賞が新たな時代の科学に求められる人材に光を当てた意義は大きい」と話しています。

バリー・バリッシュさんの業績

バリー・バリッシュさんは、1994年にLIGOの2代目の所長に就任しました。当時は観測施設の建設が承認されていながら、全く進んでいない状況で、計画の中止も危ぶまれていました。バリッシュさんは当初は技術を高め、経験を積みながら改良を行って観測を目指すという、2段階で建設を進める新たな計画を打ち出しました。これが現実的な計画だと評価され、予算の増額も勝ち取ります。

バリッシュさんはNHKのインタビューに対し、「重力波の観測にはいくつもの研究開発が必要だと言うことがわかっていた。そのためには建設だけでなく、研究開発のための予算も必要だと頼んだ」と話し、長期的な見通しをもって計画を立てたことが成功の秘けつだと明かしました。

もう1つ、バリッシュさんが力を入れたのは優秀な人材を確保することです。大型施設の建設に必要なエンジニアなどをチームに加えたほか、1997年にはLIGO科学コラボレーションという組織を立ち上げ、世界中の1000人を超える研究者が参加できる仕組みを作りました。

バリッシュさんは「私たちは装置を作って動かし、科学を理解してチームを改善できる人たちを集めました。この幅広いコラボレーションがなければ、私たちは重力波の観測に成功していないと思います」と話していました。