暴力団排除教室で使う冊子「君たちも暴力団にねらわれている!!〜心に『スキ』を作らない」
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全国最大の指定暴力団山口組総本部(神戸市灘区)で10月にあったハロウィーンイベントを前に、兵庫県警から子どもを参加させないよう指導を求められた神戸市教育委員会が「組員の子どもが差別される」などとして「知らない大人から物をもらわないように」と文言を和らげて伝えていたことが分かった。同市内の学校では同様の理由で暴力団排除教室も開かれていない。県外には子ども向け暴排教育を盛り込んだ条例も定められており、学校現場での暴排と人権擁護の両立が課題となりそうだ。


 神戸市教委によると、10月初旬、山口組のイベント情報が地域に広がる中、県警から「子どもを行かせないように」と要請があった。市教委は組員の子どもがいるなどの場合は、人権に配慮した文言も使うよう各学校に伝えたといい、市教委幹部は「暴排は進めたいが、親の職業で子どもに不利益があってはならない」と強調している。イベントには約800人の親子連れが訪れ、「残念だが、各家庭の判断だ」とした。

 暴力団追放兵庫県民センターは2016年から中高生向けに暴排教室を開催。暴力団が特殊詐欺や売春などの犯罪で活動資金を得ていると伝え、近づいたり、加入したりするのをやめるよう生徒に指導している。ただ、暴力団事務所の多い地域で開催が少ない傾向にあり、神戸市内の学校は一度も受け入れていない。

 ある教諭は「親の職業を尋ねる機会はあっても隠されるなどし、誰が組員の子どもかを知る機会は少ない。分裂で衝突が起きる中、暴力団についてはこれまで以上に口にしづらい」と明かす。県警によると、組員情報は捜査情報扱いのため、外部には明らかにしていない。

 一方、10年4月に全国で初めて暴排条例を定めた福岡県は、子どもが暴力団に入らないようにするための教育の必要性を条例に盛り込んだ。制定前の県民意識調査では「暴力団を容認できない」の回答が若い世代ほど少なかったといい、正しい理解に向け16年度は中学・高校の96%で暴排教室を開いた。

 山口組は過去にも総本部の年末餅つき大会で集まった市民に「お年玉」名目で現金を配るなどしており、県警は今季もハロウィーンに続いて同様の動きがないか警戒を強めている。

 暴力団追放兵庫県民センターは「暴排教室は暴力団の『入り口対策』であり、広く実施できるように取り組んでいきたい」としている。

【配慮の議論深めて 兵庫県立大の竹内和雄准教授(生徒指導論)の話】「暴力団排除の教育は必要だが、組員の子どもがいる教室で暴排の授業をすれば、生徒間の不和や差別の助長につながり、本人の心理的負担も大きい。教員も保護者が組員という理由で対応を避けることはできない。学校側は無理と決めつけるのではなく、警察側と議論を深め、どのような配慮ができるか、子どもの将来まで見据えた対応が求められる」

配信2017/12/13 06:10
神戸新聞NEXT
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