任天堂が業績を急回復させている。昨年3月に売り出した新型ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の世界的なヒットが要因だ。収益体質の強化に向け、販売2年目を迎えるスイッチをゲーム愛好家以外にも普及させ、具体化し始めたキャラクタービジネスを軌道に乗せられるか。本格復活に向け、正念場を迎えている。

■試金石は「ニンテンドーラボ」

 「究極の野望は1人1台だ」。1日に東京都内で開いた経営方針説明会で、宮本茂取締役はスイッチについて、通常は「家庭に1台」の据え置き型ゲーム機としては極めて高い販売目標を掲げた。

 スイッチ本体の2018年3月期の販売予想数量は1500万台。米国では累計1億台が売れたWii(ウィー、06年発売)を上回る勢いで売れているという。君島達己社長も「今後はゲーム愛好家以外の理解を得るのが大事だ」と強調。Wiiがスポーツや健康管理のソフトを発売して普及したように、老若男女に支持される商品展開を行うとした。

 その試金石が4月発売のソフト「ニンテンドーラボ」だ。段ボールでピアノやロボットなどの模型を作り、スイッチと組み合わせて遊ぶ商品で、低年齢層や保護者の関心を集めようと狙う。一方、9月にオンラインサービスを有料化し、ネット対戦を充実させるなど、ゲーム愛好家にも目を配る。

 また、宮本氏は「最大の強みである通信機能を生かせば、大勢で持ち寄って一緒に遊ぶ新しいジャンルができる」と述べ、Wii超えに自信を見せた。

 ただ、不安要素もある。携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」は発売から7年となる。持ち運べる点でスイッチと競合する可能性もある。君島社長は「当面は両方受け入れられると思うが、将来は未知の領域。いろんな可能性を検討している」と話す。スマートフォン向けゲーム事業も18年度中に人気作「マリオカート」を投入する方針を示したが、「まだ収益の柱には育っていない」(君島社長)のが実情だ。

■キャラクタービジネスが鍵に

 今後の鍵を握るのがキャラクタービジネスだ。「マリオ」などの人気キャラが消費者の目に触れる機会を増やし、ゲーム機の販売に結びつける戦略を描く。この日の説明会では「スーパーマリオ」のアニメ映画化を正式発表した。20年夏には、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市)でキャラを生かした新エリアができる予定だ。

 君島社長は、取材に対して「映画は映像ビジネスの一部」と述べており、さまざまな媒体で映像化したマリオを発信する考えを示す。ただ、こうした試みはリスクと背中合わせでもある。失敗すれば、同社が重視するキャラの価値を損なう。ゲームの世界観や面白さを伝える創造力が試されている。

2018年02月02日 08時03分
京都新聞
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