釈放から、3月で4年を迎える袴田巌さん(81)。最近は、浜松市中区で一緒に暮らす姉秀子さん(84)と県外にも出掛けるが、拘禁症の影響は続く。一方、収監当時の様子を知る元刑務官の男性が2日までに取材に応じ、「症状の改善には無罪判決が必須」と訴えた。

 手袋を外した左手の親指と人さし指で円を作ったり、ピースサインを送ったりする袴田さん―。そんな姿を散歩コースの人々は日常の光景と受け止めているようだ。連日数時間外に出掛け、ゲームセンターの大型スクリーンを見詰めたり、自動販売機で飲み物を買ったりして自由を確かめているかに見える。

 ただ、支援者の男性(72)は「『自分は神』というところから抜け出せないでいる。本人はまちをパトロールしているとの認識のようだ」と話す。

 「大丈夫。最高裁の裁判官は神様みたいな人たちだから。僕は信じている」。最高裁で上告が棄却され、死刑判決が確定する数カ月前の1980年の夏。東京拘置所内で初めて袴田さんと会った元刑務官で、罪を犯し償った人の更生支援を行うNPO法人理事長の坂本敏夫さん(70)=東京都立川市=は、逆転無罪判決を信じ続け、そう袴田さんが話していた姿がまぶたに焼き付いている。

 最後に坂本さんが袴田さんと会ったのは88年の暮れだったが、まだ元気な様子だった。

 多くの死刑囚を見てきた坂本さんは最近の袴田さんの様子をメディアで知るたび、「死刑の恐怖の中で無罪を訴え続けながら生き延びるには、妄想の世界を作り上げるしかなかった。それは、病気というより人間の『本能』に近いのでは」と感じている。そして、「癒やすのは無罪判決しかない」と訴え、「いつか浜松に会いに行きたい」とも話す。

 秀子さんは「巌が行きたい場所があればどこにでも連れて行きたい。次は日光東照宮に連れて行きたい」と話している。

 ■再審可否、判断へ 3月にも抗告審手続き終了

 袴田巌さん(81)の即時抗告審で、弁護団と東京高検は2日、東京高裁(大島隆明裁判長)に対し、先月中旬に双方が提出した最終意見書に対する反論の書面をそれぞれ提出した。

 同日で文書の提出などは全て終了し、同高裁は来月にも静岡地裁の再審開始決定を維持するか否かについて判断する。

 会見した西嶋勝彦弁護団長によると、同日は反論の文書を提出するとともに大島裁判長と面会し、早期に決定を出すよう文書で申し入れた。その際、大島裁判長は決定前には弁護団に対し期日を通知する旨伝えたという。西嶋弁護団長は「明言はなかったが、早ければ3月中旬にも出るのでは。99%地裁決定が維持されると思う」などと自信を示した。

 双方の最終意見書への反論の主なポイントは、弁護側DNA型鑑定やみそ漬けされた「5点の衣類」の色に関する主張という。

2/3(土) 7:35
@S[アットエス] by 静岡新聞SBS
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