沖縄県で2018年4月から、さまざまな防犯機器を搭載したタクシー「タクパト」の試験運用が始まります。事件や事故に遭遇した際、位置情報や画像データ付きで通報する機能を持つというタクシーは、社会をどう変えるのでしょうか。

パトカーのような、犯罪抑止につながる存在に

 内閣府と沖縄県ハイヤー・タクシー協会は、車載カメラやタブレット端末、警察への通報システムなどからなる防犯機器を搭載したタクシー、その名も「タクパト」の試験運用を、2018年4月下旬から始めます。

沖縄最大の繁華街、那覇市の国際通りとタクシーのイメージ
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タクパト」の対象は、沖縄県内のタクシー400台です。運転手が事件や事故に遭遇した際、車載カメラの映像や位置情報を沖縄県警に通報できるといい、警察の捜査に寄与するとしています。どのようなものなのか、内閣府に聞きました。

――タクシーがパトカーの役割をするということでしょうか?

 言葉はいろいろあるかと思いますが、タクシーを使ってパトロールを行うイメージです。車内と車外にカメラがついており、運転手が事件や事故を見つけたとき、車内から迅速に、かつ詳細な記録をともなって通報することができます。犯罪行為が行われようとしているところにパトカーが通れば、犯人がドキッとして抑止につながることがありますが、「タクパト」の存在が知られれば、これと同様にタクシーが通ること自体が犯罪抑止効果を持つようになると考えています。

――どのような経緯で実施に至ったのでしょうか?

 内閣府沖縄総合事務局と、沖縄県警、沖縄県ハイヤー・タクシー協会の3者で議論するなかで生まれたアイディアです。特に事件が目立っているからというわけではありませんが、沖縄総合事務局ではいわゆる「青パト」(青色回転灯を付けた防犯パトロールカー)も走らせており、犯罪を抑止するためのさらなる取り組みのひとつとして実施します。

警察と連携深めるタクシー 「タクパト」もさらに進化

 沖縄県ハイヤー・タクシー協会の東江(あがりえ)一成会長によると、「ドライブレコーダーと車内のタブレット端末をつなぎ、事件を目撃した運転手が110番センター(通信司令部)へカメラの映像を送ることができます。もちろん、タクシー車内での犯罪に対する自衛強化という側面もあり、そのような行為の一部始終もリアルタイムで警察に提示できます」とのこと。「観光立県を目指すなかで、沖縄が世界一安全な島だとアピールしたいです」と意気込みます。また、「タクパト」のタブレット端末には別途アプリをインストールし、多言語化やキャッシュレス決済に対応するという目的もあるそうです。

 そもそもタクシーには、強盗に対応するための様々な防犯設備があります。たとえば、前部座席と後部座席を仕切るアクリル板もそのひとつ。屋根上の表示灯、いわゆる「行燈(あんどん)」を赤く光らせることによる車外への緊急SOS機能なども備わっています。全国ハイヤー・タクシー連合会によると、10年前に全国で発生したタクシー強盗などの犯罪行為は、年間約200件を数えましたが、防犯カメラの設置が進んできたことなどから、現在は100件前後となり、検挙率も向上しているそうです。

「街を24時間走っているタクシーは、防犯について警察とも密接に連携しています。たとえば、犯罪捜査に協力するためドライブレコーダーの映像を警察に提出する協定は、大多数の都道府県ハイヤー・タクシー協会で結んでいますし、特殊詐欺被害の防止や人命救助などにより、年間数十人のドライバーが警察から感謝状をいただいています」(全国ハイヤー・タクシー連合会)

 このようなタクシーと警察の連携から生まれる沖縄の「タクパト」ですが、ゆくゆくはさらに「進化」するそうです。沖縄県ハイヤー・タクシー協会の東江会長は、「3年後をめどに、カメラを顔認証機能付きのものにし、警察庁の犯罪者データベースと連携させる予定です。こうなると、指名手配犯などが沖縄を歩いていれば、タクシーがすぐに見つけてしまうでしょう。凶悪犯罪者は沖縄に入れないわけです」と話します。

タブレット端末やドライブレコーダーなどからなるシステムを搭載。タブレットの画面をタッチすると、事業者の配車センターや県警の通信司令部に画像や位置情報が送信される(画像:内閣府)。
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2018.02.04
乗り物ニュース
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