厚生労働省は今国会に提出予定の働き方改革関連法案に関し、裁量労働制拡大の実施時期を2020年4月とする方向で検討に入った。当初予定の19年4月から1年遅らせる。厚労省が実施した裁量労働制の調査に不備があったことが影響したとみられる。働いた時間でなく成果で評価する「脱時間給制度」の創設も1年延期し、20年4月とする見通しだ。

 同法案の扱いを巡り、加藤勝信厚労相が21日午後にも安倍晋三首相と協議する。

 厚労省の調査を巡っては、一般労働者と裁量労働制で働く人の労働時間を異なる条件で聞き取り、裁量労働制の労働時間が短くなっていた。首相が1月の衆院予算委員会でこの調査結果を取り上げて答弁したが、その後撤回して「不適切だった」と陳謝。同省は不備を認めて調査結果の詳細などを示したが、野党は「捏造(ねつぞう)」と追及している。

 働き方改革関連法案では、裁量労働制の適用範囲について一部の営業職なども対象に含めるようにする。残業時間の上限規制や同一労働同一賃金などが柱で、当初は原則19年4月からの適用をめざしていた。ただ、中小企業への影響を懸念する自民党からの指摘を踏まえ、中小の適用は残業規制は20年4月、同一賃金は21年4月にそれぞれ1年ずつ遅らせる方針が決まっている。調査不備を巡る混乱を受け、厚労省は裁量労働制拡大や野党の反発する脱時間給制度創設の施行時期も延期に傾いたもようだ。

2018/2/21 11:16
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2718235021022018MM0000/