【2月24日 AFP】ケニアの12歳少女、ジョイスさんの運命は、牛30頭で決められた。この牛と引き換えに、彼女は父親とほぼ同年齢の男性の3番目の妻になったのだ。ようやく思春期に達した年齢であることなど、ここでは問題にならない。

 ジョイスさんはケニア西部の自宅から、国境を越えてウガンダに送られた。しかし夫との新たな生活を嫌い、すぐに逃げ出した。

 ただ実家には戻らなかった。逃げ込んだ先は、ウガンダ北東部の学校「Kalas Girls Primary School」だった。ここには児童結婚と、「女性器切除(FGM、女子割礼)」の儀式から逃れた100人以上の幼い少女たちが集まっている。

 ウガンダでは2010年以降、FGMは違法となっている。だが少女の婚姻準備ができたことを示す伝統の儀式として、FGMはいくつかの地方共同体でいまだに続いている。

 ジョイスさんは儀式の前に逃げ出したのでFGMを避けることができたが、強制結婚をさせられた別の少女、ローズさんはこの違法行為から逃れることができなかった。彼女は若くして結婚させられ、子どもを1人産んだ。FGMも施された。「お産で痛かったが、それでも彼らは止めなかった」と当時のつらい経験について語った。

 FGM廃止活動を進める地元慈善団体ビジョン・ケア基金(Vision Care Foundation)のジェームズ・アポロ・バカン(James Apollo Bakan)氏は、ジョイスさんやローズさんらが所属するポーコット(Pokot)の人々の間では、FGMが「女性を純潔にするとともに、性欲を抑える」目的で行われていると説明する。半定住半遊牧のポーコットの男性らは、家畜の群れを追って家を留守にする間の妻の不貞行為を防ぐために、施術後の性行為に苦痛が伴うようになるFGMが必要と考えているのだという。

 国連人口基金(UNFPA)発表の推計データよると、ポーコットの女性と少女の95%がFGMを受けているとされる。

■伝統的側面からのアプローチ

 しかし近年、こうした悪しき慣習には伝統的側面からのアプローチで対応するとの動きがあり、ポーコットのスピリチュアルヒーラーや高齢者らが、FGM根絶を目指してこの問題に取り組んでいる。

 FGMを半世紀にわたり行っていたという70歳の女性も、今後一切儀式を執り行わないことを決めた。女性は目に涙を浮かべながら、FGMによってこれまでに幼い少女らが出血や感染症で命を落としていることをAFPの取材に打ち明けた。

 ある時の儀式では、汚染された刃物を使ったことで少女ら6人をHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染させてしまったという。「この6人の少女がどのように死んでいったか、彼女らが受けた苦痛を思うとき、私は心が痛み、申し訳なかったと思う」と後悔をにじませた。

「妹がFGMにより死んでいくのを見た。自分の子どもたちを同じ目に合わせたくない」──そう語るのは、地元政府のポーリーナ・イスラ・チェパル(Paulina Isura Chepar)氏だ。彼女自身もFGM経験者で、この悪しき慣習をなくすべきと強く訴えている。

 AFPの取材が行われる前の週には、これまでのFGMと児童結婚に対して許しを請う儀式があった。FGMの傷が癒えるまで少女らがとどまっていたとされる洞窟の近くで行われたこの儀式では、オスのヤギがいけにえとしてささげられたという。

 儀式を執り行ったスピリチュアルヒーラーのジェレミアさん(78)は「ここではもうFGMを受けた女性たちが祝福されることはない。彼女らはこの行為を呪い、そしてわれわれにやめるよう訴えている」と語った。(c)AFP/Grace MATSIKO

http://www.afpbb.com/articles/-/3163252