● 要約者レビュー

 残念ながら日本では、中国についていい印象を持っている人が多いとは言いがたい。

 大半の日本人にとって、中国といえば反日思想や観光地での騒々しさが真っ先に思い浮かぶだろう。両国間には依然として歴史や領土の問題が山積し、緊張関係が続いている状態だ。とくに2012年秋に起きた反日デモをきっかけに、中国に対するイメージを悪化させた日本人が増えたのはまちがいない。

 しかし一方で、中国人が本当は日本をどう見ているか、しっかりと考える機会はほとんどないのではないだろうか。

 本書『中国人の本音』は著者が自ら汗をかいて歩きまわり、中国人の本音を引き出した珠玉の一冊だ。ここで触れられているのは反日デモの裏側や、東日本大震災に関する中国の反応といったものだけではない。SMAPや宮崎駿氏、高倉健氏の人気の高さ、『窓ぎわのトットちゃん』の記録的売れ行きなど、日本のポップカルチャーが中国でどう受け入れられているのかについても、しっかりと取材がなされている。あくまでも市井の人々に軸足を置き、庶民目線で語られているのが特徴だ。

 大上段に構えた政府や企業寄りの広報誌ではないし、嫌中を煽るドロドロした本でもない。中国嫌いの人でも、本書を読めば中国に対する印象が変わるのではないか――そんな期待を抱かせてくれる良書である。(田中 佐江子)

  ※省略

◆日中双方の真実を知る努力を
◇過去最大規模の反日デモ

 少しずつ日本に好意をもつ中国人が増える一方で、反日・抗日デモの動きはなかなか収まらない。2012年8月中旬、亮馬橋地区にある日本大使館近辺で反日デモが始まった。尖閣諸島に上陸した香港の団体メンバーが逮捕されたことが発端だ。8月末に丹羽宇一郎駐中国大使(当時)の公用車が襲撃される事件が発生すると、9月11日に日本政府が尖閣諸島を国有化したことで、デモはさらに激化した。

 このデモのピークは国有化後の最初の週末、9月15日から18日だった。とくに15日は、北京や上海、重慶など50都市以上で過去最大規模のデモが起きた。このとき山東省青島市などでは、日系スーパーが大きな被害を受けた。青島イオンの窓ガラスや店舗は破壊され、青島市中心部から見て西に位置する黄島区のジャスコ黄島店も、ほとんどのガラスが割られてしまった。

 青島イオンは地元学生への奨学金支給や緑化事業など、社会貢献の面でも知られていただけに、関係者は「現地の人に喜ばれる企業として地道に事業に取り組んできた。ただ反日と叫びたたき壊す行為が愛国なんてまちがっている」と声を荒げている。

 過激な行動を当局が許容すると、生活に不満を募らせた一部の若者や中高年が反日・抗日を掲げ、日系企業で働く中国人との間で混乱や対立を引き起こす。しかも日本人は中国に対するイメージをますます悪化させてしまう。反日デモは結局、中国人自身も傷つく結果を招くのである。

 ◇東日本大震災で中国メディアが変わった

※省略

 だが東日本大震災がこうした体制を変えた。あの未曾有の災害は中国でも大きく報じられ、日本に取材拠点をもたない商業メディアの記者も、発生直後から相次いで取材ビザを申請した。これまで日本に行ったことがなく、官製メディアの報道内容で記事を作ってきた商業メディアの記者が、自らの問題意識で日本国内を動くようになったのだ。

 中国の記者たちを待っていたのは、驚きの連続だった。被災者たちは物資を奪い合うこともなく、建物は一部しか崩れていない。犠牲者や避難者の数は正確に把握され、名前も一字一句まちがわれなかった。こうした様子を目の当たりにした記者たちは、中国ならもっと多くの人が犠牲になったのではないかと考え、日本を批判するどころか高く評価する記事を書き連ねた。

 中国の災害報道では、当局の救援ぶりや作り上げた英雄の活躍ぶりを伝えることが中心で、被害の実態や犠牲者の数などが報道されることなどめったにない。今後は中国でも、多くの人が知りたい情報を、客観的に報道することが求められるだろう。

 ◇日中双方のメディアで発信する人たち

 ※省略 

◆日中友好に導く人びと
◇SMAP・宮崎駿・高倉健の存在

 芸能人やクリエイターの活躍を通じて、日本や日本人のイメージがよくなったという中国人は多い。SMAPもそのきっかけのひとつだ。

2/26(月) 6:00
ダイヤモンド・オンライン
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180226-00160555-diamond-bus_all&;p=1