オンライン・デーティングの市場規模は拡大の一途を辿っている。サイバーエージェント子会社のマッチングエージェントと調査機関デジタルインファクトの共同調査によると、2017年のマッチングサービスの市場規模は256億円だった。同調査では、2018年にこの規模は374億円(前年比46%増)になると予測している。

広がる“若者のTinder離れ” マッチングアプリ離れても「#つながりたい」ミレニアルが向かう先は?【他の写真を見る】

オンラインの出会いの市場は成長する一方で、マッチングアプリの世界に旋風を起こした「Tinder」をやめる人たちがいま続出している。なぜか?
.
■「顔がすべて、人間性に行き着かない」

「もう、恋愛ゲームのすべてに希望を失いました」

1年前、熱烈なTinderella(ティンデレラ、Tinderにハマる女性のこと)だった政府事業団体勤務のチカさん(26)は2018年2月上旬にTinderから“決別”した。アプリをアンインストールするだけでなく、アカウントまで消去。過去のマッチと会話を全て消し去った。

チカさんは「この1年でTinderユーザーの質は明らかに落ちた」と怒りをぶつける。他にも「ユーザーが多くなったために良い人に出会えなくなった」という不満も聞かれる。

「写真を見てお見合いみたいに相手を選ぶところからスタートするのに、まともにプロフィールを完成させている人が全然いない」

そう話すのは、飲料系企業で働くミナさん(26)。2017年、Tinderで彼氏を見つけてアプリから卒業したが、それまでに嫌な思いも何度もしたという。合コンなどでも態度の悪い男性に出会うことはあったが、Tinder上ではより直接的に欲望がぶつけられることが多く、辟易したそうだ。

同じくTinderユーザーだった、IT企業勤務のヒロさん(27)もあきらめた様子で言う。

「結局顔がすべてなんですよね。人間性に行き着かない。僕みたいに顔面偏差値が低い人にはキツい」

ヒロさんの友人のうち、3人はアプリから「卒業(アプリで恋人を見つけてやめること)」、7人が「中退」したという。ヒロさんも1年ほど続けたTinderを2017年のクリスマスに中退した。

この動きはアメリカでも加速している。ワシントン・ポストによると、シリコンバレーの独身男女の間では、マッチングアプリによる出会いへの信頼性が失われてきている。

同紙によると、シリコンバレーの男性エンジニアは、誰も続けることを望んでいないのに、皆がやっているからという理由で続けなければならない状況を指して「まるでストックホルム症候群のよう」だと指摘している。

ストックホルム症候群:精神医学用語の一つ。誘拐や監禁などにより拘束下にある被害者が、加害者と時間や場所を共有することによって、加害者に好意や共感、さらには信頼や結束の感情まで抱くようになる現象。(

■消費支出ではNetflixに次ぐアプリ

ここ数年でマッチングアプリを介した出会いの市場は世界的にも伸びている。アプリ市場の分析をするApp Annieの調査によると、Tinderをはじめとする主要マッチングアプリの1日あたりの利用者数(DAU)は2017年を通じて全体では増加している。2017年の国内ダウンロード数では、トップが「タップル誕生」、次いで「Pairs(ペアーズ)」「Tinder」が続き、戦国時代だ。だが、内容を見ると、利用頻度が伸び悩んでいるサービスとの明暗も分かれる。

マッチングアプリの中でもTinderは、2017年に最も多くの課金(消費支出)を記録したという調査結果もある。世界的には非ゲーム系アプリ全体の課金ランキングでもNetflix(ネットフリックス)に次ぐ第2位と、ミレニアル世代の「出会いのインフラ」となりつつある。

だが一方で、ユーザー層が広がり、新規の参入者が増えたために、早くからの利用者が離れはじめてもいる。

「出会い疲れ」の声も上がる。Tinderを数年愛用していた、人材系ベンチャー勤務のダイキさん(28)は「最初は厳選して右スワイプ(Like)していたが、効率が悪いため、最終的には顔も見ずに全員右スワイプしていた。(Tinderは)コンバージョン(目標の達成)までに工数がかかり、面倒くさい」と語る。


>>2以降に続く

2/26(月) 12:10
BUSINESS INSIDER JAPAN
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180226-00010002-binsider-sci&;p=1