児童扶養手当を差し押さえていたことが分かった。こうした措置は違法判決が確定している。市は「何度も督促したが一度も連絡がなく、相談に来てもらうためだった」と釈明。児童関連手当の差し押さえをしないようにする。

 市によると、昨年8月10日、国保税を滞納していた30代女性2人の銀行口座に振り込まれた直後の児童扶養手当約5万5千円と、約23万円を差し押さえた。2人が市役所を訪れ、国保税を分割して納める約束をしたため全額返金した。

 市は「2人が相談に来れば返すつもりだった」と話した。当時、1人は失業していた。同様の差し押さえは滞納税の徴収強化を始めた2014年度から数十件あるという。

 児童扶養手当や児童手当は子育てに影響が出るため、法律で差し押さえが禁じられている。一方で「差し押さえが禁止されているものでも、口座に入れば預金となり、禁止の属性は失われる」とした最高裁判決(1998年)があり、口座に入れば差し押さえできると解釈されていた。

 これに対し、2013年の広島高裁松江支部判決は、鳥取市の男性の銀行口座に振り込まれた児童手当を9分後に差し押さえた鳥取県の措置について「実質的に児童手当を受ける権利を差し押さえたものと変わらず、違法」と判断した。

 判決は確定し、総務省は「支給された手当が使えなくなるような差し押さえは控えるべきだ」と都道府県に通知。鹿児島県は市町村に、滞納者の事情を把握して対応するように説明していた。

 鳥取県の訴訟を担当した勝俣彰仁弁護士(大阪)は「児童手当の口座入金後の差し押さえは脱法行為で認められない。垂水市のケースは氷山の一角だろう。行政は手当の趣旨を理解し、法を順守してほしい」と話している。

2018年03月03日 06時00分
西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/398452/