経済政策は、株価や為替レートのために存在するわけではない。しかし、投資家が経済政策の影響を受けるのは事実だし、
経済政策の影響は、投資家の観点から見ると分かりやすい場合がある。

 昨今、株価は不安定に上下しているが、ここ数年の日本の株価が、「アベノミクス」と総称される、
大規模な金融緩和を中核とする政策によって上昇してきたこと、そして下支えされてきたことは間違いない。。。。

日本経済の将来に関しては、さまざまな見方があろうが、当面の株価に限っては、アベノミクスが中断されたり、
継続されたとしても何らかの理由で頓挫することがあったりすると、相当に大きな悪材料であることは、誰しも同意するところだろう。

 端的に言って、ここ数年、内外の投資家は、少なくとも大規模な金融緩和政策が継続されることを頼りに日本の株式を買っていたし、
現在も保有する理由になっている。

森友学園、株式投資家にとって不幸中の幸いは、この問題の発覚が、安倍首相が日銀の首脳人事を済ませた後であったことだ。

黒田東彦総裁の続投は、金融緩和継続のメッセージとして分かりやすいし、副総裁に就任する若田部昌澄・早稲田大学教授は、
明確な金融緩和論者であり、論争にも強い「最強のリフレ派学者」と呼べる人選なので、
日銀の金融緩和政策がインフレ目標の達成の手前で明確に縮小されるリスクは小さい。

 ただし、日銀自体の判断でできる有効な金融緩和策は乏しい。外債の購入ができると有効だろうが、
「為替操作である」との外国からの批判を回避して可能にするためには、日銀だけでなく、財務省、政治家も巻き込んだ、
相当に高度な根回しが必要になる。

■2019年に予定される消費増税の行方

 安倍内閣が強力なまま継続しているなら、2019年に予定されている消費税率引き上げを、
政治判断によって延期、ないしは凍結する可能性が期待できる。
消費税率引き上げによる増税は、金融緩和政策の効果を減殺し、デフレ脱却にも株価にも大きな悪影響がある。

筆者は、安倍首相の後継首相が、「財政再建バイアス」を持った人になる可能性が大きいと予想するので、
森友問題の影響で安倍内閣が退陣に追い込まれる場合、消費税率が予定通り引き上げられる可能性がより大きくなるのではないかと予想する。

 他方、森友学園関連の文書改ざんは、財務省の大問題であり、財務省は組織の解体に追い込まれかねないし、国民の信頼を失うので
、消費増税には動けなくなるとして、消費税率の引き上げが遠のくと論じる向きもあるようだ。

■日経平均で最大2000円安くらいの悪材料か

前述のように、早ければ今春にも、もしくは秋にも安倍政権が終わるとすると、いずれの場合も株価にとっては大きな悪材料だ。

 理由は、安倍首相の後の自民党総裁候補として名前が挙がる岸田文雄氏、石破茂氏、小泉進次カ氏などの有力者が、これまでの発言から判断して、
いずれも安倍首相よりも財政再建優先に傾いていることだ。

現状で、アベノミクスの焦点は、金融政策から財政政策に移っている。物価を上げるためには、財政的な需要の追加が必要だし
(インフラ投資などの財政出動よりは、広く消費者の手にお金が渡る減税や給付金がいい)、
長期金利をほぼゼロにコントロールする日銀の政策を前提とすると、金融緩和の「量」の拡大自体が財政収支に大きく依存している。

 つまり、次の首相が「財政再建」という言葉を口にした瞬間に、アベノミクスは大きく失速する。

 ドル・円の為替レートは、アベノミクスが順調であることを前提とし、5円から10円程度、自然な水準よりも円安に傾いていると考えられる。
これが剥落するとすれば、株価に対しては日経平均でざっと2000円級の悪材料になり得るのではないだろうか。

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