「世界最大規模の量子コンピューター」のキャッチフレーズでNTTや国立情報学研究所(NII)などが公表した計算装置について、プロジェクトを実施した内閣府は22日、当面はこの装置を「量子コンピューター」とは呼ばないことを決めた。公表後、チーム内部も含めた専門家から「量子コンピューターとは言えない」と異論が相次ぎ、混乱を招いていた。

 量子コンピューターは、現在のスーパーコンピューターをはるかに上回る計算能力を持つと期待される。問題の計算装置は内閣府の大型研究開発プロジェクト「革新的研究開発推進プログラム(通称インパクト)」の一環で、山本喜久・NII名誉教授が主導して開発した。2000個の光子を相互作用させて計算するのが特徴だが、一部に汎用(はんよう)の集積回路を使っている。

 山本氏は毎日新聞の取材に「新しい方式の量子コンピューター」と主張したが、内閣府が開発チーム内外の専門家7人に意見を聞いたところ「集積回路が計算速度を決めている可能性があり、処理性能が飛躍的に伸びるか確信は持てない」「基礎的な理論実証がまだまだ必要」などの意見が出た。内閣府は22日にあったインパクトの作業部会で、この装置を「量子コンピューター」と呼ばないことを決め、山本氏も了承したという。

 量子コンピューターの定義を巡っては、米国に本部を置く専門学会が用語統一を検討しており、内閣府はこの結論を待つ方針だ。

 一方、NIIの広報担当者は取材に、発表資料にあった「世界最大規模の量子コンピューター」の表記は山本氏個人の見解だったと明らかにし、「今回の装置を量子コンピューターと呼ぶのは適切ではない」と回答した。【酒造唯、阿部周一】

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