ラットの性フェロモンをラットに食べられる立場のマウスが感知し、防御行動をとることがわかったと東京大などのチームが30日、発表した。異種間の駆け引きの仕組みの解明に役立つ可能性がある。成果は米科学誌カレント・バイオロジー(電子版)に掲載された。

 チームは、オスのラットの涙に含まれるたんぱく質を塗った布をメスのラットやマウスに接触させた。ラットのメスは一時停止し、交尾の準備とみられる行動が増えたことから、このたんぱく質が性フェロモンとして働くことを確認した。

 一方、マウスでは、防御行動に関わる脳の領域が活性化。フェロモンを含む布を避けるようになり、活動量や体温、心拍数が低下した。チームは、マウスは恐怖で身をすくめたのではなく、危険を察知し次の行動に備えていると分析する。

 東原和成(とうはらかずしげ)教授(農学生命科学)によると、食べる側の動物が獲物が出す物質を認識する例は知られているが、獲物となる動物が食べる側の性フェロモンを感知することがわかったのは初という。東原さんは「食べる側と食べられる側の動物がどのような駆け引きをして生き延びているかを知る手がかりになる」と話す。(南宏美)

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