【カイロ篠田航一】レイプの加害者が被害者と「結婚」すれば暴行の罪を免れる法律が残るイラクで、5月の連邦議会選を前に法律廃止を目指す動きが起きている。中東では昨年、チュニジアやヨルダン、レバノンで同様の法律や条項が廃止されており、保守的なイスラム社会で女性の権利擁護につながる動きとして注目される。

 「イラクの女性が公正に扱われるよう、議会に訴えたい」。イラクの人権派弁護士ラシャ・ハリド氏はロイター通信にそう語り、今後、デモ行進などを通じて有権者に意識向上を呼びかける考えを示した。女性議員の間にも「大規模な運動」を目指す動きがあるという。

 イラク政府は2014年以降に台頭した過激派組織「イスラム国」(IS)を昨年、ほぼ壊滅状態に追い込んだが、3年に及ぶ戦闘で国土は荒廃。連邦議会選では経済再建に加え、戦闘の陰で声を上げられなかった女性の権利向上も争点になるとみられる。

 中東やアフリカではレイプ加害者の刑事免責を法律に定める国があり、不本意な結婚を強制される女性が多い。レイプされても結婚してしまえば家族の名誉は守られるため、「泣き寝入り」が後を絶たないとみられる。

 モロッコでは12年、両親や裁判官の勧めで加害者と結婚した16歳の少女が自殺。これを機に法律の廃止を求める声が高まり、14年に撤廃された。ヨルダンも昨年、加害者が被害者と結婚し、5年間離婚しなければ不起訴になると定めた刑法308条を廃止した。エジプトも1999年に廃止している。

 一方、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは昨年8月、「性的虐待を許す時代遅れの法律をまだ維持する国がある」との声明を出し、シリアやリビア、バーレーンなど同様の法律を維持する国に撤廃を求めた。

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