https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180411/k10011398271000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_001

4月11日 2時12分
シリアで化学兵器が使われたという疑惑を巡ってアメリカのトランプ大統領がアサド政権に対し軍事攻撃も含めた対応を検討するなか、化学兵器の使用を否定するアサド政権はOPCW=化学兵器禁止機関に対し現地での調査を要請し、OPCWが近く調査チームを派遣することになりました。

今月7日、シリアの首都近郊で化学兵器の使用が疑われる攻撃によって多数の死傷者が出たことについて、アメリカのトランプ大統領は9日アサド政権による攻撃だという見方を示し軍事攻撃も含め、速やかに対応を決めるとしています。

これに対し、化学兵器の使用を否定するシリア外務省は10日、オランダのハーグに本部があるOPCW=化学兵器禁止機関に対し調査チームを現地に派遣するよう公式に求めたことを国営通信を通じて明らかにしました。

アメリカは去年4月、アサド政権が市民に対して化学兵器を使用したと断定し、対抗措置として、軍事施設を巡航ミサイルで攻撃しており、アサド政権によるOPCWの派遣の要請は、こうした攻撃を避けようという狙いがあるとみられます。

一方、OPCWは10日声明を出し、シリア政府に調査チームの受け入れを求めたところ、これに符合する形でシリアやロシアから調査の要請がきたとして調査チームを近くシリアに派遣することを明らかにしました。

化学兵器の砲弾だとされる映像出回る

ソーシャルメディア上には、今月7日に、シリアの首都ダマスカス近郊で化学兵器として使われた砲弾だとされる映像が出回っています。

このうちロイター通信が9日に東グータ地区のドゥーマで撮影されたものだとして配信した映像では、ガスマスクを着用した男性が天井に穴が開いてがれきや壊れた家具が散乱した部屋で、「これがアサド政権による攻撃の証拠だ」と話し、ベッドにカメラが向けられています。ベッドの上には、砲弾とみられる、一部が黄色く塗られたような灰色の筒状のものが映っています。

同じ部屋のものと見られる映像は、この地域を拠点とする反政府勢力「イスラム軍」の幹部のツイッター上でも公開されています。この映像ではガスマスクの男性が「砲弾は爆発しなかったが、ガスが漏れ出てきてベッドの上に黄色い跡が残っている」と説明しています。

これらの映像が撮影された正確な場所や、砲弾とみられるものが保存されているかなどについては明らかにされていません。

ロシア「でっち上げだ」

アサド政権を支援するロシア軍の幹部は10日、地元メディアに対し、「現地調査の結果、サリンや塩素などの毒物による被害者は病院にはいなかった」と述べ、今月7日、シリアの首都近郊で化学兵器が使用されたという情報について反政府勢力による「でっち上げだ」と改めて主張しました。

また、OPCWのロシア代表部は声明を発表し、「緊張が急速に高まっていることを踏まえ、OPCWが専門家を速やかにシリアへ派遣し、状況を明らかにするよう求める」としています。