2018.4.19 06:30

 島根県の日本海沿岸に3月、ポリタンクが大量に漂着した。その大半にハングル表記がみられ、一部には強酸性液体の内容物が確認された。ポリタンクの漂着は近年、日本海沿岸を中心に増えており、同県では昨年2〜3月にも約3千個が流れ着いた。歓迎されざる“冬の風物詩”となりつつある状況に、沿岸自治体は困惑している。

 3月2日午後2時ごろ、同県出雲市の海岸部をパトロールしていた県出雲県土整備事務所の職員が、湊原海岸にポリタンクが21個漂着しているのを発見。周辺を巡視した結果、約17キロの範囲で538個のポリタンクを確認し、その大半にハングルの表記がみられた。

 県は他地域にも漂着しているとみて、巡視を強化。16日までに、同市など7市町で2301個の漂着を確認、2124個が回収された。このうち、182個に内容物があり、検査を終えた162個のうち96個に強酸性、8個に弱酸性、2個に弱アルカリ性の液体が残存していたことが分かった。漂着はこれ以降、目立ってはないという。

 一方、ポリタンクの漂着は近隣でも相次いでみつかり、鳥取県では3月12日までに161個を回収。山口県や兵庫県、京都府などでも確認された。島根県によると、流れ着く量は近年増えており、平成28年には県内で4051個に上った。

 ポリタンクの大量漂着について、関係者は「韓国のノリ養殖に伴う化学物質の違法な使用が関わっているケースが多い」とみる。ポリタンクに社名が表示されていたある韓国系企業は「私たちが不法投棄したと疑われ、心外だ」と憤る。

 担当者によると、この会社はノリ養殖向けなどに製品の過酸化水素などをポリタンクに入れて販売しているが、ポリタンクの中身を塩酸に詰め替えて転売されるケースが相次いでいるという。塩酸は漁民の多くがノリ養殖の際に異物を取り除くため使っているが、使用は禁じられている。当局も取り締まりを強化するが、塩酸などが残ったポリタンクの不法な海洋投棄が後を絶たないという。

 同社は不法投棄を根絶するため、政府に取り締まり強化を要請。使用済みポリタンクの回収率を高め、2次利用されるのを防ぐ努力も続けている。

 日本に流れ着くのはポリタンクだけではない。近年はさまざまな海洋ごみが漂着している。

 環境省がまとめた漂着状況(平成28年度)は、ポリタンク1万6029個(20道府県)▽医療系廃棄物2089個(10県)▽漁具18万6465個(14道県)▽電球類2430個(12道県)など。ポリタンクについて同省は韓国に再発防止の徹底などを要請した。

 ポリタンクの漂着が突出して多い島根県は、中身を検査した上で強酸性やアルカリ性の残留物は専門の業者に委託して処分。空のポリタンクは県や各自治体の予算で処分している。それらの経費も軽視できず、国へ対策を要望しているという。

 県防災危機管理課の担当者は「何よりも重視するのは、ポリタンクの残留物などで危害を受ける人が出ないこと」といい、3月中旬に事態が落ち着きをみせるまで、沿岸自治体や住民に注意喚起を続けてきた。

 この時期に漂着が多いのは、海流の向きと関係しており、担当者は「日本海の地形的、気候的な要因から島根への漂着が多いのはある程度やむを得ないが、事態の改善に向けて政府が韓国にしっかり働きかけてほしい」と話している。

http://www.sankei.com/west/news/180419/wst1804190001-n1.html