JR北海道は6月から、釧路と根室を結ぶ根室線(花咲線)で観光列車を走らせる。といっても、豪華列車を造るわけではない。景勝地で速度を落としたり、車内で多言語音声案内を提供したりと、普通列車をお金をかけずに観光列車にする。JR北としては初の試みで、厳しい経営状況のなか、観光客の心をつかもうと頭をひねっている。

 花咲線は釧路―根室を結ぶ営業距離135・4キロの路線。住民が通学や通勤、通院に使う生活路線だが、沿線の厚岸―糸魚沢(いといざわ)間にはラムサール条約登録湿地の「別寒辺牛(べかんべうし)湿原」や、別当賀(べっとが)―落石間にはシカの群れが多く見られる落石海岸など、景勝地もある。東根室駅は「日本最東端の駅」として知られる。

 JR北は、こうした花咲線の魅力を観光資源として発信し、観光客を呼び込もうと、6月1日から11月30日まで、観光列車を走らせることにした。

 ただ、新しく列車を造ることはせず、従来の普通列車に工夫を凝らして走らせる。厚岸―糸魚沢間(1・5キロ)と別当賀―落石間(1・8キロ)で、一日上下各1本ずつ、通常時速55〜70キロの速度を時速30キロに落とし、車窓からゆっくり風景を楽しめるようにする。また、東根室駅には、通常1分の停車時間を2分に延ばし、駅ホームにある記念碑で乗客が記念撮影できるようにする。

 列車がこれらの見どころにさしかかると、スマートフォンなど携帯端末から音声ガイドが自動的に観光案内する無料アプリも開発。外国人観光客も利用できるよう、日本語のほか英語、中国語、韓国語での案内も用意する。

 さらに、乗客が事前予約すれば、根室、東根室の両駅で「焼きさんま寿司」と「やきとり弁当」、厚岸駅で「かきめし」と、ご当地弁当を駅で買うこともできるようにする。

 JR北広報は「絶景や食など、花咲線の魅力を地元自治体とも協力して、どんどん発信していきたい」としている。

■「当社ならではの身の…

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