目視の気象観測や宿直など廃止・大幅削減を検討 気象庁
4月21日 4時36分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180421/k10011412111000.html

全国の地方気象台で行われている目視による気象観測や宿直などの業務について、気象庁が廃止や大幅な削減を検討していることが関係者への取材でわかりました。廃止や削減の対象となる業務は、各地域を統括する管区気象台などが行うため、気象庁は「防災対応に支障はない」と説明しています。

関係者によりますと、廃止や大幅な削減が検討されているのは、全国の地方気象台の業務のうち、雲の量や見通しを示す「視程」など、職員が一日に複数回、目視で行っている観測や、「現業室」と呼ばれる部屋で夜間と早朝に宿直の職員が行っていた気象の観測や自治体からの電話対応、それに都道府県ごとの天気予報の作成などです。

このうち、目視による観測は監視カメラなどで自動化するほか、「現業室」で宿直が行っている作業は、東京や大阪、福岡など各地方を統括する「管区気象台」などに集約して行うということです。

この廃止や削減について、気象庁は20日までに行った内部への周知では、「防災対応に支障はない」と説明しているということです。

気象庁は職員の負担を減らすことで、大雨や地震などの災害の際に市町村に職員を派遣し、避難勧告の適切な発表や救助活動の安全確保に必要な情報の提供や助言を行うなど、支援を強化することにしています。


背景には業務の増加も

今回の地方気象台の業務の廃止や大幅な削減は、3年前の「関東・東北豪雨」や去年の「九州北部豪雨」などを受けて、気象庁が設置した有識者などによる検討会が、去年8月に取りまとめた報告書に基づき、進められてきました。

報告書では職員の数が少なく、災害時に市町村などへの支援を強化するため、気象庁に対し、ふだんから気象台の職員が地元の市町村を頻繁に訪問するなどして協力関係を構築することや、大雨が予想される際や実際に大きな災害が発生した場合には、市町村に職員を迅速に派遣し、防災上の助言を行うなどの対策を新たに進めるよう提言しています。

これを受けて、気象庁は気象台のトップが市長や町長に直接電話をかけて危機感を伝える「ホットライン」の充実や、「JETT」と呼ばれる専門の職員で作る支援チームを来月創設し、大雨や地震などで被害が出た市町村に派遣するなどの新たな取り組みを行うことになりました。

この結果、新たな業務が増えるとして、これまでの業務の廃止や大幅な削減の検討を進めることになったということです。ただ、廃止や削減の対象となっている業務のうち、「宿直」については、これまで行っていた観測や天気予報の作成などの作業はやめるものの、夜間や早朝に気象台に誰もいなくなるのではなく、職員1人は必ずいるようにするということで、急に大雨になったり、地震が起きたりした場合には、ほかの職員を緊急参集し対応を行うということです。

また、夜間や早朝の自治体や消防、警察など関係機関からの連絡には、管区気象台などが対応するとしていて、気象庁は「防災対応に支障はない」と説明しているということです。

しかし、一部の職員からは、夜間などに急に災害が発生した場合に適切に対応できるのかや、職員の人材育成への影響を懸念する声も出ています。

気象庁は今後、廃止や削減する業務の具体的な内容や導入する時期などについて、さらに検討を進める予定です。