中学生を対象にしたスマートフォン用のいじめ通報アプリ「STOPit(ストップイット)」の活用が全国の自治体に広がっている。公立中のなかで昨年初めて導入した柏市で相談件数が急増し、効果を上げていることが影響しているとみられる。千葉大などは今後、いじめ対策の授業で使われる教材を産学官連携で増やしていく方針だ。

 米国発のアプリは、同国内で約6000校329万人が利用できるほど普及している。国内ではITサービス会社「ストップイットジャパン」(東京)が独占販売代理店契約を締結している。

 柏市は昨年5月、市内の中学生が無料でダウンロードできるようにして、昨年度は約1万人の対象者のうち486人が登録した。いじめの相談件数は前年度の電話とメールでの相談に比べて約5倍となる133件に急増。4割(56件)は、いじめやネットトラブルに関する相談だった。急増の理由は、子供たちのコミュニケーションツールとしてアプリが一般的になっているためとみられる。市教委は「いじめが深刻になる前に対応できる」とアプリを評価し、今年度はモデル校を選んで小学校でも導入する。

 アプリを導入する際、生徒がより理解しやすいよういじめ対策の授業も行っており、授業で使う動画などの教材は、同大や柏市教委などが産学官で連携して開発したものだ。

 教材の動画は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に悪口を書き込まれていじめられる生徒を、その様子をみている別の生徒の視点から描いたドラマ仕立てで、ストップイットジャパンがDVD3000枚などを全国の教育関係者らに無償配布し、普及に努めた。

 同大によると、アプリと授業を導入した自治体は野田、山武両市のほか、茨城県、神奈川県、岡山県などにも拡大し、今年度は利用可能な対象者数が約100校5万人に広がる。道徳が今年度から小学校で正式教科となり、19年度には中学校でもスタートすることから、道徳の授業でも使えるようSOSを発信するためのホウレンソウ教育や性的少数者(LGBTなど)をテーマに多様な性を理解する教育など新たな教材も今年度中に制作するという。

 同大教育学部付属教員養成開発センター特別研究員でストップイットジャパンの谷山大三郎社長は「教育の力が大事だと思うので、相談する手段のアプリだけが普及するのでなく、いじめは許さないということを学ぶ授業とセットで広がってほしい」と話している。

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