長く続いた朝鮮戦争がいよいよ終わるかもしれないという局面ですが、外務省はどこの世界線にいるのでしょうか?詳細は以下から。

◆安全保障環境は冷戦時期よりも、キューバ危機よりも厳しい?
5月15日、外務省が今年の外交青書をまとめました。同日に閣議で報告された外交青書ではなんと日本を取り巻く安全保障環境について「戦後最も厳しいと言っても過言ではない」と指摘しています。

この「戦後」は言うまでもなく第二次世界大戦を指しますが、戦後には冷戦があり、米ソが核開発競争を続け、ほんの少しの手違いで第三次世界大戦が起きかねない状況がありました。

そうした冷戦のいわゆる「代理戦争」としてベトナム戦争や朝鮮戦争があり、1962年10月から11月にかけてはキューバ危機も発生しました。この際はまさに米ソによる全面核戦争の一歩手前の状況であり、正真正銘の人類存亡の危機でした。

外務省は2018年5月における状況がこの時期よりも厳しいと明言していることになります。

実際には2017年に起こった北朝鮮の核・ミサイル開発に関する危機は4月の南北首脳会談での板門店宣言によって沈静化し、6月12日にシンガポールで開催される米朝首脳会談では朝鮮戦争が終結するとの見方もある状況です。

「北朝鮮の言うことを信用するのか?」という意見が出てくるのは致し方ないものですが、大切なのはこの記述が外務省の外交青書の中に描かれた日本政府の公式の認識であるということ。

これは安倍首相が米朝首脳会談に対して「歓迎したい。核問題、ミサイル問題、何よりも重要な拉致問題が前進していく機会となることを強く期待したい」と発言して融和ムードを歓迎しているのとは正反対の認識として水を差すものになります。

一方、安倍首相も南北首脳会談後の5月1日に訪問したヨルダンが1月に北朝鮮との国交断絶に踏み切ったことを評価し、両首脳は北朝鮮が「完全な非核化」を実現するまで最大限の圧力を維持する方針を確認。

また、明日5月16日には再び北朝鮮からの弾道ミサイルの着弾を警告するJアラートのテスト放送を実施するなど、二枚舌での外交が続いています。

こうした態度は東アジアで急速に進展する融和の流れに逆行するだけでなく、国としての立場すら大きくブレ続けている事を印象づけ、不信感を増幅させる結果にしかなりません。既に安倍政権がこの件で蚊帳の外にいることは今更指摘するまでもありませんが、今後ますます置いてきぼりにされる危険性が増える一方です。

◆いったいなんでそんなに厳しいのか?
いったいなぜ現状で外務省はそのような認識である事をわざわざ外交青書に記したのでしょうか。そしてそんな厳しい状況をもたらしたのは何なのでしょうか?

ところで日本では第2次安倍政権の発足から既に5年半が経過しています。そして我が国の最高責任者を自称する安倍首相は「外交の安倍」として世界各国を飛び回り、「地球儀を俯瞰する外交」として積極的に戦略的外交を行ってきました。

5年以上の長期政権であれば、当然ながらその国の現状は良いことであれ悪いことであれ「政権の方針の成果」ということになります。そう考えれば、外務省が「戦後最も厳しいと言っても過言ではない」とまで指摘する日本を取り巻く安全保障環境を作り出したのは他ならぬ安倍政権ということになります。

実際に北朝鮮と韓国が板門店で歴史的な握手を交わし、国外からの脅威が大幅に減少している以上、安全保障環境を悪化させている要因があるとすれば消去法で国内の脅威ということにしかなりません。

外務省のこの認識は単に日本を取り巻く状況が見えていない故の無能なのか、それとも安倍政権への精一杯の批判なのか、いったいどちらなのでしょうか?

https://buzzap.jp/news/20180515-mofa-crisis/