自民、公明両党は17日の衆院憲法審査会の幹事会で、憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案を野党に示した。2016年に改正した公職選挙法などと整合性をとる内容で、野党の賛同を得て月内に国会提出し、今国会での成立をめざす。自民党の改憲案をめぐっては、与野党間で機運が高まっていないとして今国会での議論を見送る公算が大きくなった。

与党が示した国民投票法改正案は商業施設などへの共通投票所の設置を可能にしたり、期日前投票所の投票時間を弾力化したりするもので、計8項目に上る。憲法改正に反対する共産党がこの改正案に反対する考えを表明したものの、立憲民主党など他の野党は持ち帰って検討するとした。共産党も含めて野党は憲法審査会での審議には応じる方針だ。

16年に公職選挙法を改正した際、与野党は全会一致で可決・成立させた。「一度は賛成した内容を国民投票に広げるだけなので野党も反対する理由はない」と自民党幹部はみる。

ただ、立憲民主党は国民投票法について、与党案にないテレビCM制限の導入を求めている。現行法は広告や宣伝活動に原則としてどれだけお金をかけてもよく、資金力のある与党が有利とみるためだ。

与野党は今後、衆院憲法審の幹事懇に日本民間放送連盟の関係者を呼んで、テレビCM規制について意見聴取する方針だ。野党の主張に耳を傾け、国民投票法改正案に関する野党の党内手続きに必要な時間を確保することで野党の理解を得たい考えだ。

自民党は国民投票法の改正論議を「呼び水」として、同党の改憲案の審議に道筋をつける狙いがある。今年3月に憲法9条への自衛隊明記を柱とする4項目の改憲案をまとめたが、改憲推進本部の幹部は「今国会中の改憲論議は難しい」と語る。今国会は国民投票法改正案の審議だけにとどまる方向だ。

19年に入ると春の天皇陛下の退位や統一地方選、夏の参院選などが続く。来春までに憲法改正の国会発議を経て国民投票まで終えていなければ、改憲論議は当面停滞しかねない。国民投票は国会発議から60〜180日以内に実施すると定めており、自民党はなお年内発議の可能性を探る。

2018年5月17日 19:30
日本経済新聞
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO30643190X10C18A5PP8000?s=2