米海軍が昨秋以降、長崎県西海市に駐機場のあるエアクッション型揚陸艇(LCAC(エルキャック))の夜間航行訓練を、佐世保湾の内外で繰り返している。市は国と「夜間の航行は行わないように米軍と調整する」との協定を結んでいるが、米軍は今後も続ける構え。国には止める権限がなく、地元では不信感が募っている。

 10日の日没後。西海市と同県佐世保市の岬が向き合う湾口部を、LCACが地鳴りのような音を立てて夜間航行訓練に出た。4月初旬は2機が出動。400メートルほど離れた岸で騒音値を測っていた九州防衛局職員の集音器には「72デシベル」と表示され、職員は「高速道路を走行中の車内といったところ」と説明した。西海市によると、走行中の電車内に匹敵する80デシベルになることも頻繁だ。

 LCAC駐機場は佐世保市にあったが、住宅地が近く、騒音が問題になり、国は湾南岸の旧西海町への移転を計画。町は受け入れ、2000年1月に「夜間や早朝の訓練をしないよう福岡防衛施設局(当時)が米軍と調整する」との協定を国と結んだ。05年に西海町など5町が合併して誕生した西海市も協定を受け継ぎ、13年3月に「横瀬駐機場」への移転が完了した。

 だが米海軍は昨年11月7〜9日、湾内で夜間航行訓練を実施した。杉沢泰彦市長は「重大な協定違反だ」と反発し、防衛局に抗議文を提出。市議会も同月、禁止を求める国あての意見書を全会一致で可決した。


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