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 大阪府八尾市の顕証(けんしょう)寺(浄土真宗本願寺派)に同寺の開祖・蓮如上人(1415〜99年)が成仏させた大蛇の骨と伝わる巨大な頭骨が
シャチであることが分かり、23日に東京で開催された生き物文化誌学会で、大阪大総合学術博物館の伊藤謙特任講師らの調査グループが発表した。
シャチのほぼ完全な古い頭骨はあまり例がなく、化石であれば国内初の貴重な資料となるため、今後の調査に注目が集まりそうだ。

 この骨は「蓮如上人ご救済の大蛇骨」として、同寺に伝えられてきた。伝承では、石山本願寺(現大阪城)の開創(1496年)直後に
現在の大阪市中央区の南御堂付近で発見。蓮如の夢に現れた女が大蛇「龍女(りゅうじょ)」に変えられて苦しんでいると訴えたことから、
これを救済したあと海に死体があがった、とされている。

 骨は頭部から上あごにかけてで、最大長は約1メートル、幅は65センチと大きく、重さも約70キロ。全身は約7メートルになるとみられる。

 伊藤氏がこの骨の存在を知り、鳥取県立博物館の渡辺克典氏や益富地学会館(京都市)の石橋隆氏らと調査。上あごの歯列跡やサイズ、
頭蓋の特徴などから、完新世(約1万年前〜現在)のシャチと判断した。骨の表面の硬化状態から化石である可能性が高く、
今後生息していた年代などを詳しく調べるという。

 顕証寺の近松真定(しんじょう)・第20代住職によると、頭骨は「お堀を掘っている折に見つかった」とも伝わる。
実際に大蛇骨の発見場所とされる付近では、地下鉄工事などの際に完新世初期の地層から鯨類の化石が大量に発見されているといい、
伊藤氏は「そのころの環境にシャチもいたと考えるのは十分可能。海の生き物の頂点にあるシャチの研究の一級の資料になる」と話す。

 一方で、頭骨にはのこぎりのような道具で切り取られた跡も見つかっている。
発見後の数百年の間についたとみられるが、詳しい理由は分かっておらず、グループではこの点も今後調査したいとしている。

 近松住職は「龍女伝承も大切だが、こうしたしっかりした調査によって何であるかが明らかになることも大切で、ありがたいこと」と話し、
ほとんど公開されてこなかった頭骨の一般公開も検討しているという。

 伊藤氏は「文化的価値と自然科学的価値を併せ持ち、極めて貴重。
こうした資料は各地に眠っていると思われ、今後の同様の調査のきっかけとするためにも、頭骨をさらに詳細に調べたい」としている。